ドロップ
□君と出逢った日に
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桜が散る、雲ひとつない青空。
この風景を見て人は何を思うか。
(田舎なんだなァ・・・)
田舎には珍しい、小・中・高エスカレーター式の日向学園。
そこに通う事になったあたしは、通学途中の桜並木を眺めながらそんな事を思っていた。
別に、田舎が嫌いなわけじゃないけど、かわいい雑貨店も映画館も遊園地も、何も無いというのは流石に耐えられなかった。
春休みの間どれだけ愚痴って友達と家族を困らせたことだろう。
(何もかもこの体のせいだ)
ふう、とひとつ溜息をつく。
自分の病弱な体が少しでもよくなればいい、という両親の思いから田舎に引越して来たのに、ひどい態度を取ってしまった自己嫌悪。
それも加わってだんだんイライラとしてきた。
だからなんだ、
目の前の人影に気づかなかったのは。
ドス・・・ッ
「・・・痛ってえなァ」
・・・・・・・・・・・・。
あぁ・・・あたしの人生終わりました。
お母さん、お父さん、最後まで親不孝でごめんなさい。
「〜〜〜っ」
目の前の金髪にパニックなあたし。
(殺されるーーーッ)
「おい、」
金髪のその声に思わず身を縮めた。
・・・のに、
「名前なんて言うんか?」
それウチの制服じゃろ、とバリバリの方言で話しかけてくる金髪・・・それは見た目とはかなりかけ離れた声だった。
(・・・見た目と違って優しそう・・・?)
「なぁ、」
「はぃッッ」
ゔ・・・・・・声裏返っちゃった。
「・・・名前は?」
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「なに笑っとん・・・キモいわぁ」
「な・・・っ!」
ガーン、とショックを受けるあたしに対してくすくすと愉快そうに笑う彼。
学校の屋上で、あたしは彼と一緒に日向ぼっこ。
桜が散る、雲ひとつない青空―――彼と出逢ったときと同じで。
(そっか、あの時からもう1年経ったんだ)
懐かしいなあ、と空を見上げる。
「そんで、なんで笑っとったん?」
にこやかに問う彼。「・・・教えて欲しい?」と意地悪に訊くあたしは1年前からあまり成長してないのかも。
「いいじゃん、教えて」
金髪が、あたしの目の位置に来る。少し上目遣いに訊く彼はいつのまにこんなのを覚えたのだろう。
あたしが上目遣いに弱いのを知っての事か。
「・・・あんたと逢った時の事、思い出してた」
ぶっきらぼうに口を開く意地っ張りなあたしは、金髪から目を逸らす。
「ふ・・・はは、」
「なによ」
怒気を込めて言ったのに、彼には全く効かないみたい。
伊達に不良やってないってか。
「相変わらずかわええなァ、・・・ってか、俺、お前の事一目ぼれじゃったし」
「・・・え?」
「なんか悩んどりそうなコじゃなって思っとった」
気付いたら目で追っとったわ〜と楽しそうに言う。
・・・っていうか、あたし、そんな事初めて知ったし。
だけど、
「あたしもだよ・・・あんたに、一目惚れ」
そっと彼の耳にささやく。
少し素直になってみようかなって。今回だけは・・・ね。
君と出逢った日に(あたしは恋に堕ちたんだ)
最後まで名前出てこなかったヒーローとヒロイン。
方言は私の地元のものです。・・・え?どこだか分かったって?
テーマは春。それらしくなるように頑張りました・・・!!
txt by ... 迂月奏(HP)