今日の兄さん(2013年)
□12月6日
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エドワードの柔らかな笑顔が、アルフォンスの肩の力を抜いてくれる。
夜の闇の中でも、輝くような金の髪がサラサラと風に弄られていた。
まるで、エドワード自身が光を放っているかのようだ。
「驚いたぜ。ちょうど今日はマスタングが車で来てたから、良かったけどな」
アルフォンスの冷えた体を、エドワードが己の体温を移すかのように、ふわりと抱きしめる。
マネージャーであるマスタングは、あまり撮影現場には来ないらしいが、何か用事でもあったのか、気が向いたのか。それとも、エドワードを食事にでも誘いに来ていたのか。
何にしても、思わぬとばっちりだったろう。
「良かった・・・寒かったろ?早く帰ろうぜ」
そんな風に、心底ホッとしたように言ったエドワードの背後から、声をかけてくる者がいた。
「あの・・・」
「・・・なんだよ」
せっかくのアルフォンスとの再会をジャマされて、エドワードの声色のトーンが落ちる。仕事ではないとき、当然だがエドワードは不機嫌を隠さない。
「エドワード・エルリック、だよね?」
「だったら、なんだよ」
美人は怒っても美人だ。
超絶と謳われた美貌に凄みが増す。
「あの、さ。ちょっとでいいんだけど、時間無いかな?」
「無い。オレ、もう帰るから」
「いや、あの、一枚撮らせてもらいたいんだけど」
そっけないエドワードに対して、それにも気付かないのか目をキラキラさせて交渉しようとする。
「あそこにいるのがオレのマネージャーだから、あいつに交渉しろよ」
完全にアルフォンスの敵認識したらしいエドワードは、撮影隊リーダーのいかにも媚びる口調にも揺るがない。
ばっさり、すっきり。非常にわかりやすく、大人気なく拒否する。
車から出てきたマスタングを、エドワードは視線一つで呼ぶ。
かなり機嫌の悪さを悟ったマスタングも、嘆息して寄ってきた。
「オレのこと、撮りたいんだって」
「ギャラを提示してくれれば、契約も考えますよ」
さすがのマスタングは、煮ても焼いても食えない表情で、撮影隊リーダーをあしらっていく。