今日の兄さん(2013年)
□12月4日
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書類の関係で病院を往復するのは、通常ならば軍医ではなく看護師や郵送、急いでれば下士官たちが運ぶのが通例らしい。
しかし、エドワードに至っては、おおよそ自ら配達してしまう。細かい打ち合わせや病院からの書類を受け取ったり、なにより気分転換にもなるからだった。もちろん、エドワードが忙しい時には、トリアやピラウに行ってもらうときもある。
「カーターさん、おはよー!」
「おはよう。早いな、エドワード」
馴染みの憲兵に挨拶しながら、駆け寄った。
「あれ、新しい人?」
「ああ。俺の部下になったんだ。よろしくな」
「そっか。こちらこそ、よろしく。お手柔らかに。じゃあ、オレ行くから!」
「またな」
町の住人なら嫌わずとも積極的には会話などしない憲兵とも、他愛も無い会話をしていく。
「あの・・・」
「おう、なんだ?」
エドワードの背を見送りながら、新しい部下となった男に声をかけられ、カーターは返事をしながら顔を向けた。
「あの・・・今の男って・・・その、今までにウチの世話になったことがあるとか、これからその可能性があるとか・・・」
言いたいことは、なんとなくわかる。
エドワードの会話は、憲兵に対してあまりにも気軽過ぎる。
「安心しろ。そんなんじゃない」
「ええ・・・」
「軍医だ、あの人」
「え、軍医!?だってあんな・・・」
「あんな?」
「あ、いえ、普通もっと硬い感じじゃありません?軍医って」
「エドワードは昔からあんなだよ」
たまに、チンピラ紛いの啖呵を切るが、あえて教えなくてもいいだろう。
「はー・・・東方って変わってますね」
たしかにな、と、エドワードの背が見えなくなったほうを見て、カーターは遠い目になった。