スクール革命

□流れる気持ち
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 翌日、授業なんて耳に入らないほど、僕の頭は真っ白だった。
「おまえさあ、何やってんの?」
「僕・・・なんか失敗しちゃったみたいで・・・ってか、元をただせば、ジョンのせいかも!昨日、兄さんに謝ったのが、なんかマズくて、今朝まで葬式並に暗いんだけどウチ!」
「八つ当たりするなよ」
 それでも、目に涙浮かべて言い寄る僕が哀れに見えたのか、ちゃんと逃げないで聞いてくれる。友人ってありがたい。
「おまえさあ、いつもは冷静で物事すっぱり判断するのに、なんで兄貴のことになるとそんなにバカになるんだよ?」
「・・・そうかな・・・そういえば・・・」
 超がつくほど細かいみじん切りになったタマネギを、よくよく炒めて、でも焦がさないようにして、ホワイトシチューは自分でも良く出来たと思うくらいの出来栄えだったのに。兄さんだって、好物だって言ってくれて、2杯も食べてくれたのに。
 それだけじゃ解決してないように思ったのは、ぎこちない兄さんの笑顔だった。
 初めて会ったときのような、ぱあっと明るい笑顔じゃなくて、なんだか・・・表現できないけど、消えそうなって感じ。
 そう、ジョンに言えば、溜め息をつかれた。
「んなの、直球すぎたんじゃね?あれだ。弁当とか作ってくれる女子っているじゃん?」
「いるね」
 自慢じゃないけど、父子家庭と知った女子から以前は毎日と言っていいくらいの差し入れ弁当があった。このところ、兄さんの作ってくれた弁当のほうが美味しいので、そう断ったらだんだん少なくなってきたけど。でも、押し付けるように置いていく女子もいる。
「ほら、さ。食ってもらいたいんだよ。おまえに何かしてあげたいってやつだろ?このタラシめ」
「タラシたことなんてないよ。勝手に来るだけで」
「ムカつくやつだな。な、でも、これでなんとなくわかんねえ?内心はどう思ってても、愛想の良いのが取り柄なアルフォンスくん」
「なんかさ、慰めてくれるんじゃなかったの?」
 はっきり言ってくれるのはありがたいけど、今日の僕には痛すぎる。
「わかんねえの?」
「わかんないよ。だって、兄さんは車椅子でタイヘンなのに」
「それだって。兄貴なんだから、弟に何かしてやりたいって思うんだろ。俺もクソみたいな弟がいるから、なんとなくわかるけどよ。あれ、不思議だぜ。なんとなく気になる存在っての。弟ってずるいよな」
「うーん?そうかな・・・?」
「そうだろ。家事とか、思うように出来ないから弁当くらいって思ってたのに、その弟に拒否されたんだぜ。車椅子だからってな。そもそも、なんで車椅子なのか、聞いてみたことあるの?」
「ない・・・そういえば、なんでだろう?」
 小さいころ、僕が生まれたころは普通だったような・・・でも1歳かそこらだしな・・・
「もっと、話し合ってみな。兄弟っても、ほとんど他人みたいなもんなんだから」
「そうか・・・でも、兄さん、話し合ってくれるかな・・・」
「そこまでは知るかよ」
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