スクール革命

□そばにいたいという気持ち
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 アルフォンスいかにも納得していない顔で学校に行ったのを見届けて、エドワードは溜め息一つ、肩の力を抜いた。
 今まで一人で育ってきたので、急に兄弟と言われてもどうしていいのかわからないのが本音だった。
 アルフォンスは、あのクソがつくほどの親父に育てられたにしては、優しいし思いやりもあるやつだと思う。常識などは、父親を反面教師にしたのかと思うくらいだ。母親譲りの柔和な顔立ちといい、自分にはない男らしい体つきといい、学校でも人気があるのは頷ける。弟ということを差っぴいても、十分いいやつだ。
「まあ・・・そのうち慣れるなかな・・・」
 こんな、車椅子に乗っている兄貴がいると知って、アルフォンスはどう思ったろう。
 エドワードと違って、アルフォンスは兄がいることを対面直前まで知らなかったと、引越し直前に父親が告白した。本当に、どうしたらこんな常識をすっ飛ばして海の藻屑にしたような大人になるんだろうと首を捻る。優しくて大好きだけど、浮世離れした母親だったから、こんな親父でも平気だったのだろうが。生まれた子供の身にもなってほしい。
 考えても答えはでない悩みを、もう一つ溜め息をついて切り替えた。
 テーブルに置きっぱなしだった携帯電話を手にする。
「あ、もしもし?オレ。うん、悪いけど、今日だけ手伝ってくれるか?ああ・・・悪いな。よろしく」
 短くも要点だけ伝える。相手にはこれだけで十分なのだ。
「さて」
 車椅子を器用に操って、まだ馴染まない自室に戻る。
 キッチンに入ったエドワードは、特製の杖を支えに立ち上がっていた。
 長時間立っているのは辛いが、食器を洗うくらいなら大丈夫だ。
 なにより、車椅子では流しに届かない。アルフォンスは気づいてないようだが、朝食もあらかたこうして作っていた。
 一通り片付けを終わらせると、マンション入り口からのインターフォンが鳴る。
「おう。今開ける」
 部屋はメールして教えてあった。
 やがて、玄関を開ける音がして、呼び出しに応じてくれた友人が入ってくる。
「おはヨ、エド」
「悪いな、リン」
 目を細くして微笑むリンは、アルフォンスとは違った穏やかな雰囲気を持っていた。
「んジャ、行こうカ?」
「ああ。準備は出来てるから」
「タクシー、待たせてあル」
 車椅子の後ろに立ったリンに玄関の鍵を渡せば、リンも何の躊躇もなく受け取った。




「弟さんとハ、どうなんダ?」
「いいやつだよ、あいつ」
「ふーん・・・」
「突然現れた兄貴の病院通いに、付き合わせるわけいかないだろ」
「ふーん。たしか、同じ高校の2年生なんだよネ?」
「あいつ、うっかり病院行くなんていうと、学校休みそうだからな」
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