スクール革命

□好きだという気持ち
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 兄が転校した初日である昨日は、学校は大騒ぎになった。
 転校生は皆無な学校ということもあるが、全ての教科の編入試験を満点クリアしたという噂がたちまち全校に広がり、加えて車椅子の美人だ。血気盛んな青少年が騒がないはずがない。
 僕と兄弟ということもあっさりバレて、おかげで僕まで休み時間は友人たちに囲まれることになって辟易したくらいだ。
 いろいろな意味で注目されるだろうなとは予想していたが、それでイライラするとは思わなかった。優越感ももちろんあったけど、それ以上に苛立ちがあったのに驚いた。
 間違いなく、これは嫉妬だ。
 兄さんを見るな。名前を口にするな。僕だけのものだ。などという子供じみたヤキモチだった。今まで一人っ子のように生活していたからなのだろうか?
「はぁ・・・」
「なんだ?美味くなかったか?」
「え、いや、美味しいよ!兄さんは、料理も上手なんだね」
「そりゃあ母子家庭だったからな。年中くっついて手伝いとか、してたし」
 兄さんお手製の朝食は、馴染んでないキッチンで作ったとは思えないくらい、手際よく且つ店に出せるレベルで美味しかった。自分のことは自分でできると言ってたが、僕の食事にまで気をかけてくれるとは感動だ。
「たいしたもん、作ってないし」
「そんなことないよ。うちは父子家庭だったからね。朝食なんて、もっと簡単だったし。父さんもいないことのほうが多かったし」
「そうか・・・」
 俯いてしまった兄さんの顔が、ちょっと寂しそうだったので慌てる。
「でも、いてもいなくてもあんまり接触なかったし。そう思うと、こうして兄さんと一緒に食事するほうが、何倍も嬉しいし美味しいよ」
 そう言ってやると、ほんのり頬を染めて目を逸らしてしまった。
 可愛い。本当に可愛い。このままずっと見ていたい。
「あ、そろそろ時間だ。片付けは僕がするよ」
「いいよ、オレ、今日は学校行かないし」
「え・・・?」
 具合でも悪いんだろうか?たしかに昨日はあれだけ皆にガヤガヤ言われば、疲れるだろう。
「病院、送っていこうか?」
 こんなときのために、早く車の免許が欲しいと思うが、まだ17歳ではどうにもならない。タクシーを呼ぶか・・・と電話を取った。
「いや、具合が悪いわけじゃないから。心配するな」
「じゃあ、どうして」
「親父の本、読みたいから。大丈夫だって。学校にはちゃんと言い訳しておくし」
 まさかの、読書のための欠席とは、思いもよらなかった。
「なんか勝手に体弱いとか思われてるようだし。ここ、本すげぇよな!うちにも親父の本あったけど、ここの蔵書もかなりなもんだよな!」
 どうやら、僕と同居するにあたって、このマンションの本を自由に読んでいいというのがクソ親父との交換条件だったらしい。
「でも、兄さん、受験生でしょ?」
「あ、平気。昨日授業聞いたけど、あれなら自分で勉強したほうが早いし。てか、もう覚えちゃってるし。教科書全部」
「・・・全部?」
 進学高だけあって、教科書レベルもそれなりに高いのに。
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