スクール革命

□家族革命
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生き別れの年子の兄がいると聞いたのは、本当に突然のことだった。
「あれ、言ってなかったか?」
 のほほんとした詫びれもない顔で言った父を殴りたい衝動を必死に抑え、更に詳しいことを聞く。
「新婚時代に俺の放浪癖にまだ慣れてなかった母さんが、失踪届出したのをうっかり忘れて、うっかり7年たったら離婚したことになっちゃってな。まあ、こんなんじゃ結婚してる意味もないんじゃないかって、そのまま離婚しとくことになって。俺似のエドワードは母さんに、母さん似のおまえは俺が引き取って育てることにしたんだ」
 世紀の割れ鍋綴じ蓋夫婦を、止める者は誰もいなかったのだろうか?
 なにより、自分と父親、どうも似てない親子だと思ったら僕は母さん似だったのか。しかもこんなクソ親父似の兄がいるとか。わけわからん。
 まだ会ったことのない兄の名前はエドワードというらしい。
 こんなクソ親父に似ちゃって可哀想に。僕はまだ会ってもいない兄に、深く同情した。もっとも、あっちも、僕という弟がいたことをどう思ってるのかわからないけれど。
「で、どうして今頃・・・」
 怒りを押し殺して続きを促す僕に、殴りたくなるような笑顔で答える。
「いやー、俺も落ち着いてきたしな。そろそろ復縁しようかって話になって。母さんもまだ若いし、あんまりフリーにしておくと心配だからな」
「あんまり・・・って何年放っておいたんだよ?」
「あー・・・16、7年くらいか?エドワードが大学受験とか言ってたから…ああ、エドワードは可愛いぞ、俺に似て。良かったなあ、アルフォンス」
 あんたに似たら可愛いとは思えないんだが。心底気の毒に思った。イジメられてないといいけど。
「復縁・・・?」
 人間、本当に動揺すると、いくら頭が冷静でも口からは単語しか出てこないらしい。
「母さんも可愛いぞ。まだ34だったかな」
「おい・・・」
 さすがに怒りが込み上げる。
「年の差幾つだよ、このロリコン野郎!」
「パパに向かってそんなこと言ったらダメだぞ、アルフォンス」
「あんた、今年で還暦じゃないか!犯罪者!」
「恋に年齢はないんだぞ、アルフォンス」
 本格的に頭を抱える。
 それをどう思ったのか知らないが、脳内花畑状態になった父親、ホーエンハイムが言う。
「次の土曜日、みんなで再会の食事会だ。嬉しいだろ、アルフォンス?おまえの兄に会えるんだぞ」
「パスしちゃダメかな?それと、一人暮らしする準備したいから…」
 もう、父親はいないもんだと思いたい。
「それなら、食事会の後は、久しぶりに母さんと二人っきりで旅行に行ってくるから、この家でだって一人暮らしが満喫できる。嬉しいか?」
 そんな常識知らずのことは、今まで想像もしてなかったよクソ親父。
「もういい…生活費だけは忘れず振り込んどいてよ」
 僕は、この件に関しての思考を手放した。
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