カメラマン弟×美人モデル兄

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 都会のクリスマスを彩るイルミネーション。
 シンプルで華やかな光は、町行く人々を惹きつける。
 そんな輝く風景の中、まるで王のように荘厳で魅惑的に微笑むエドワードが、テレビの中でも眩しく映し出されていた。
 いまや超一流と言われるエドワードのこの笑顔一つに、何十億差し出されているのだろう。
 男性からも女性からも絶大な人気を誇る彼の宣伝力には、それだけの価値があった。
 実際、町などに貼られたポスラーなどは、ものの3分で剥がされ盗まれるという。
 宣伝用とはいえ、そのポスターに価値がついてしまうほどだった。



 そんな、大手企業がぜひ我が社の宣伝にと頭を下げるエドワードが、社長室で声を荒らげていた。
「なあ、オレの宣材用意してくれって!用意してくれたら、あとは一人で大丈夫だから!」
「しかし・・・」
 珍しく必死な様子で懇願するエドワードに、眉をしかめているのは社長でありエドワードのマネージャーでもあるロイ・マスタングだ。
「オーディション受けさせてくれ!」
「しかし、これくらいの仕事だと、君の場合はギャラの問題で落とされるというか撥ねられる可能性があるぞ」
「ギャラなんて、どうでもいい。この商品の宣伝がしたいんだ」
 エドワードのいう商品とは、新年会や送別会などこれからの若者のパーティーにターゲットを置いての新しい炭酸飲料だ。その売り出しの宣伝活動に、企業がオーディションでイメージモデルを決めるというものだった。
「ギャラが下げるということは、君のレベルが下がるということにもなりかねない」
「レベルとか、どうでもいい。そんなことではオレはびくともしない。なあ、頼むから!」
 溜め息をつくマスタングに、エドワードも一歩も引かない。
「君は、本当に一度言ったら引かないな」
「たまにはいいだろ?こんな仕事も。やらせてくれたら、この前来てたあの仕事、請けるから」
「・・・仕方ない」
 まさか大口契約になる仕事を取引に出されるとは思わなかった。
 一瞬眩暈がしたが、すぐ立ち直ったマスタングは傍らの受話器を手にして、どこかに内線をかけた。
「・・・ああ、私だ」
 サービスだとばかりに見せるエドワードの笑顔に、内心が手に取るようにわかっていても、つい苦笑してしまうマスタングだった。



 エドワードの自宅には、その広いリビングに相応しい大きさのテレビがある。
「あれ、このCM、兄さんがやったの?」
 冷蔵庫から、好きでストックしてあるペットボトルを持って、テレビ画面から目を離さずエドワードに訊く。
「ああ。けっこう良く出来てるだろ?」
「兄さんなら、どんなCMも成功だよ」
 今まさにその商品である炭酸飲料を手にしたアルフォンスが、美味しそうに飲み干していた。




終わり。

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