ミニスカートの向こう側

□ラブ・ジェネレーション
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慣れるほど寝たキングサイズのベッドだが、もちろんオレのものではない。アイボリーを基調としたシンプルな作りのへやも、最早見慣れた風景だ。
体は昨夜のうちに拭かれているらしくサッパリしていたが、シャワーは浴びたかったので床に落ちていたローブに手を伸ばす。
「………くっそ」
重いようなダルさ満点の腰が、ギシリと悲鳴をあげて、オレは思わず悪態をついた。
ローブを引っ掛け寝室を出ると、キッチンからアルフォンスが顔を覗かせてきた。
「あれ、もう起きた?ちょっと待ってね。今、朝ゴハン出来るから」
身長190センチ超えの男のエプロン姿は、寝起きの頭には刺激が強過ぎるらしい。目までズキズキと痛んでくる。
「…そんなに見ないでよ。恥ずかしいよ」
恥ずかしいなら、裸エプロンなんてするな。
クルリと向こうを向いたヤツは、下着は穿いていてホッとする。
「…シャワー借りるから」
「あ、うん。タオル出しておくね」
ヒラヒラの短めエプロンは、オレのために買ったそうだ。
しかし、服装はともかく、言動は誰よりも男らしいことは、情けないことにオレが一番良く知っている。
昨夜散々オレにそのデカいモノをぶち込んで、アンアン言わせたあげく気絶するまで貪ったアルフォンスは、恋人としても最高の部類に入ると思う。
ただ、それを認めるにはオレが可哀想すぎる。なんでこんなことになっちゃったんだろう。
またそう愚痴るには、アルフォンスのファンが多すぎた。バイトの先輩にだって、アルフォンスの恋人ってだけで睨まれている毎日だ。
シャワーから出て、アルフォンスが用意してくれたタオルやら新しいバスローブやら使ってキッチンに行くと、アルフォンスも着替えていて悲しくも見慣れたミニスカ姿になっていた。ミニスカなのに、上は所謂『男前タンク』というやつだ。アンバランスなこと、この上ない。
オレとお揃いが着たいと買ってきたものだ。それをバイトの先輩にいったら、
「おまえ…いやらしいやつだな。アルフォンスに男前タンク着せるなんて…セクハラで振られちまえ」
と言われた。オレが悪いのか?オレより胸板厚いのだが。
「どう?美味しい?」
 床座りがいいというオレに合わせて、リビングのテーブルで向かい合うアルフォンスは、オレと同じ胡座だ。
「…美味いよ」
実際オレの好物ばかりだし、やつは料理も上手い。
「良かった。……ねえ…」
オレの脚を、アルフォンスの脚が触れてきた。
「そろそろ僕の部屋に越してきてよ」
「それは…」
 確かに、アルフォンスの部屋はオレのアパートの部屋より3倍は広く、二人で住むにも支障はなさそうだった。加えて、こいつと最初に過ごした一夜がオレのアパートだったので、実は非常に居辛くなっていた。所詮アパート、壁が薄いのは否めない。それに気づいて(匿名な苦情の手紙がオレんちのポストに入っていた)以来、アルフォンスの部屋で過ごすことが多くなっていた。こうして、泊まってしまうのも当然になってしまうくらい。
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