スクール革命

□わからない気持ち
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 兄が着替えてくると出ていった隙に、簡単なサラダを作って、パンを温める。
「こんなもんかな?ちょっと寂しい?」
 シチューに全力だったので、他には気が回らなかった。
「お、すげー!これみんな、アルが作ったのか?」
「うん。品数少ないけど、シチューだけはたっぷり作ったから、たくさん食べて」
「ああ!オレ、シチュー大好物なんだ!」
 なのに、牛乳はダメなんだそうだ。うん、まあ、そういう人もいるよね。
 デザート代わりに、ヨーグルトにジャム入れて出したら、それもペロッと食べてたし。本当に牛乳オンリーで飲むのが苦手なんだな。
 兄のことを、新しく一つ知ることが出来て嬉しくなる。
 いるだけで、ほんわかとした気分になる。これが家族なのかな。
 でも、僕は兄さんのことが、可愛くて仕方ない。
 一挙一動に見惚れてしまう。
 食べてるときだって、他愛もない話で、兄さんの声を聞いているだけでテンション上がりっぱなしだ。
 どうしよう。兄弟って、こんなに良いものだったのか。
 今まで知らないで過ごさせたクソ親父は、本当にクソ親父だ。クソと親父の比率を見たら、クソのほうが多いくらいのクソ親父だ。
 ああ、兄さんの髪に触ってみたい。キラキラしてて、艶々していて、こんな綺麗な金髪見たことがない。細いのに量が多くて、なんて考えてたら、手が出ていた。
「なんだ?」
「あ、いや・・・」
 突然髪を触られた兄さんが困惑するのもムリない。僕だって、正面から突然頭に手を伸ばされたら、そりゃ驚く。
「いや・・・なんか、すごく綺麗だなって思って」
「そうか?何もしてないけど」
 そういや、この人、シャンプーとかトリートメントとか、前の家から持ってこなかったよな。
「シャンプーとかは、どうしてるの?」
「え、うちにあるの使ってるけど。なんか拙かったか?」
「いや、そうじゃなくて・・・って、トリートメントしてないの?」
 コクリと頷く兄は、このまま押し倒してしまいたいという、兄弟ではタブーの世界に逝ってしまいそうだった。
 ああ、でもどうしよう。そのタブーの世界を見てみたいと思う僕がいた。
 兄弟なのに。僕はそういう趣味でもないのに。
 兄さんは兄さんなんだぞ、と自分に言い聞かせる。
「ごちそーさん!美味かったよ」
 食後のコーヒーまで飲み干して、僕に言う姿は眩しくてクラッとしてくる。
「あとで、ちゃんと家事の分担表作ろうな」
 ああ、神様。この「にこっ」の誘惑に、僕は勝つことができるのでしょうか?
 もう、家事どころか、お風呂とかの介助だってしてあげたいのに。
 兄さんが、食事を終えて自室に戻ると、反射的に頭を抱えてしまう。
 僕だって、こんなに夢中になるとは思わなかった。
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