今日の兄さん(2012年)

□12月8日
3ページ/3ページ

「え、なんだよ、車で来たのか」
「うん、安全運転していくから大丈夫だよ」
 アルフォンスが運転席に、エドワードが助手席に乗り込むと、車は軽快に走り出した。
「あれ、こっち司令部の方角じゃねえぞ?」
「自宅に帰るんだよ。明日もこれで出勤できるから、朝も少しだけゆっくりできるね」
「おまえ・・・」
 さては、召集というのは嘘だったのか。
「嘘じゃないよ。僕が兄さん不足になったんで、招集する必要があったんだ」
「なんだ、それ。でも、あの場から抜け出られたのは良かったよ。あれって、合コンとかじゃなくて、オレで遊ぶ会みたいな感じ?サウザも、予想外だったようだし・・・もう、あんなのはごめんだ。二度と行かねえ」
「僕も、そうして欲しいよ。兄さんに近寄る奴らって、鬱陶しいから」
 これが愛想のよい中佐で通っているアルフォンスの本音だ。
 弟の嫉妬と独占欲を快く感じ、苦笑した。
「家帰ったら、食事しなおそうぜ。オレ、腹減った」
 アルフォンスの横で、大きく伸びをしながら言った。
「食事もいいけど、食べ終わったら僕は兄さんを食べるからね」
「おまっ!なに言って」
「だって、そうでしょ。僕に事後承諾で合コンオッケーしちゃったんだから、そのくらいの権利あるもん」
 車は、エドワードに逃げることを許さず、逃げるつもりもないエドワードは観念したように目を瞑る。
 一旦横道で停車したアルフォンスは、満面の笑みを浮かべ堂々とエドワードの唇を味わった。




終わり。
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ