スクール革命

□【番外】運動会その3
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 エドワードに誘われて町に買い物に出たリンは、なんとなく想い人の様子が変わったように思えてならなかった。
 まさかとは思うが、あの弟に手を出されたとか。
 いやいやまさか、この固いエドワードが実の弟に許すはずがない、と否定してみるも、心の奥底でモヤモヤしている。これでいて、情には流されやすいタイプだ。まさかと思うが、弟に強く口説かれたらエドワードも・・・なんて、考えるだけで叫びたくなる。
 長いこと、じっくりとそのチャンスを狙っていたのに、昨日今日現れた弟に掻っ攫われるのだけはなんとしてでも避けたい。
 でもまあ。
 こうして、ショッピングや食事に誘ってもらえるということは、まだまだ脈があるということだろう、と解釈した。
「どっか行きたいとこ、あるノ?」
「ちょっと服見たいんだけど、いいとこ知ってるか?」
「じゃあ、セレクトショップ回ってみようカ?」
 リンが利用している、エドワードに似合いそうショップを目指す。
 表通りを抜け、やや奥まったところにその店はあった。
「黒もいいけド、たまにハもっと明るいのも似合うんじゃなイ?」
「そうかなあ・・・」
 綺麗で可愛い顔をしているのに、エドワードはどうも黒を選ぶことが多い。以前は赤いコートを着ていたときもあったが、今は黒やベージュなどといった、落ち着いた色ばかりだ。
「さすがに真っ赤なの着ろとは言わないけド」
「いや、もっと落ち着いたの・・・いや、明るいのがいいかな。そこのブルーのなんてどうだ?」
「ああ、いいネ」
 店員が寄ってきて、広げてくれる。
「こちら、若い人に人気のタイプなので、もうこれ一点しかないんですよー」
「え、そうなのか?じゃあ、サイズあるかな?」
「お客さんなら、SかMかな。これ、Sでもちょっと大きめだから、丁度いいかも」
 車椅子のエドワードの前に、あててみたりしてくれる。
「いいんじゃなイ?似合うヨ」
「いや、Sじゃダメなんだ。Lってない?」
「え、エドワードさん、Lじゃ大きいヨー」
 世の中には、小さめのLってのもあるけれど、それだってエドワードには大きいだろう。
 どうしたことかと、リンは内心で焦ったが、店員だって同じくらい焦っただろう。
「オレが着るんじゃない」
「ああ、それデ・・・って誰用?」
 予想外の他人用だった事実は、リンに衝撃を与える。
「弟のだよ。あいつ、見かけよりガタイがいいんだ」
「ふーん、そウ・・・」
 見かけよりって、どういう意味だろう。脱ぐとすごいって意味だよな、うん。で?ってか、なんで弟?なんで見た目以外の格好を知ってるんだ?
 リンの背中に、暑さからではない汗が一筋流れる。
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