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□〜悪夢〜【D兄弟/エース】
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毎朝いつも俺はルフィよりも先に目が覚める。
今日も窓から射し始めた光に目を刺激され瞼を開ける。
霞む目を擦りながら布団から起き上がった。
隣を見ると自分のベットは使わず俺のベットで一緒に寝ているルフィが規則正しい寝息をたてている。
いつもの事なので今更どうこう言わないけど…
これは寝相悪すぎだろ…
俺はルフィを起こさないようにそっとベットを出た。
俺は毎朝ルフィが起きる前に朝飯の支度をする。
いつもルフィは俺が朝飯を作り終えた後に起きてくる…
と言うより俺が起こしに行く。
数分後、俺は2人分の朝飯を作り終えたのでそろそろルフィを起こしに行くかと思っていたらバタバタと部屋の方から足音が聞こえてきた。
「起きたのか?」
自分から起きるなんて珍しい。
「…エース!…エース!!」
何やらルフィが叫んでる。
朝から騒々しい奴だ…
「ルフィ!!」
俺が呼んでやるとバタバタとルフィの足音が部屋へと近付いてきた。
「エース!?」
勢い良くドアを開け慌ててルフィが部屋に入ってきた。
「どうした?」
俺は何故か慌てふためいている弟に何があったのか聞く。
「エース!!」
「だから何だよ…?」
居ないとでも思ったのか、ルフィは俺の事をやっと見つけた!と言うような表情だった。
何なんだ?と首を傾げていると今度はルフィが思いっ切り俺に飛びついてきた。
「うわっ!?何だよ!?」
「エース!!」
また名前を呼ばれる…
エース、エースと何度もルフィは俺を呼んでくる。
俺は一つ溜め息を零し、
「俺が何したんだよ?」
「良かった!!」
「は?」
「エースが居なくなっちまったかと思った!!」
今度は突然訳の分からない事を言い出した弟。
「何でだよ?」
「夢見たんだ…」
「夢?」
「エースの夢だ!」
ルフィは必死に見た夢について話し始めた。
なんだ夢かよ…
「エースが怪我してた!すんげぇ痛そうで何処かに閉じ込められてんだ!!」
「…俺が?」
ルフィが頷く。
「俺は助けに行くんだけどなかなかエースん所には行けねぇんだ…どんどんエースは遠くに行っちまって…」
俺が怪我して閉じ込められてる?
そりゃどんな夢だよ…
俺は少し想像して苦笑いした。
「でも俺は何とかエースの近くまで所まで行けたんだ!!でも後少しの所でエースは消えちまった…」
ルフィは見た夢のことを本気で心配してる様だ。
大きな瞳には涙が浮かんでくる。
「大丈夫だ。ただの夢だって…」
俺のシャツを握っていたルフィの手に力がこもる。
「エースごめん!」
「え?」
「助けてあげれなくてごめん!」
ルフィは俺に謝り始めた…
「でも俺、今度は諦めねぇから!必ずエースのこと助けるからな!…だから居なくなんないでくれ!!」
普段だったら夢なんかで何泣いてんだと笑ってやりたい所だがそうはいかない…
真剣なルフィに俺も応えてあげなくてはいけない。
「…居なくなんねぇよ。
…だから安心しろ。」
ルフィはぎゅっと俺の腰に手を回ししがみつく。
「俺必ず助けに行くから…」
「分かったよ…」
ルフィは何でそんなにその夢を心配しているのか…
そんなに怖い夢だったのか?
たかが夢の話だろう…
そもそもどちらかと言えば逆だろう。俺に1度も勝った事のないルフィが俺を助けられんのか?
でも何故かその夢の話に不思議な感覚を覚える…
夢には思えない話だった…
「エース…何処にも行ったりしねぇよな?」
「ああ、何処にも行かねぇよ。」
「本当か!?本当に居なくなったりしねぇか!?」
「しねぇよ!」
「捕まったりもしねぇよな!?」
「当たり前だろ!!俺はそんなに弱くねえ!!…それにもし俺が捕まっちまってもルフィが助けに来てくれんだろ?」
ルフィの顔が上がった。
そして太陽のような笑顔が咲く。
「おう!!必ず助けに行く!!」
弟は言ってくれた。
この時はこの言葉がすごく嬉しかったんだ…
この時は…
何も分かっていないからその言葉とその笑顔に素直にありがとうと言えたのだから…。
END.