□〜流星〜【D兄弟/ルフィ】
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先程まで見えていた飛行機雲がいつの間にか見えなくなっていて、先程まで聞こえていた波の音も聞こえなくなっていた。

「あれ、此処何処だ?」

どうして自分が此処にいるのか自覚していなかった。
たまたま見つけた鳥を追い回していたら、気付けば辺りは高く伸びる木々に囲まれ森の中で、其処には道という道は見当たらなかった。





「どっちから来たんだっけ?」

どうやらお得意の迷子になってしまった様だ。
辺りを見回すも一帯同じ景色の広がりでどっちから来たかなんて見当もつかない。

聞こえていたはずの波の音もいつの間にか聞こえなくなっていて、見えていた飛行機雲も見えない。


根拠のない判断で決めた行く先に向けて足を進める。だがそれは更に森の奥へと足を進めていることなど本人は知るはずもない。








どれ程歩いただろうか。
一向に景色は変わらず日ばかりがどんどん落ちて視界が暗くなっていく。
焦りと恐怖を必死に内に押し込み、表に出さないようにと大声で歌ってみたり一人言で気を紛らす。



それから少し進んだ所でやっと深い森が抜け、茶色い地面が剥き出しになった。その先を辿ると下は崖になっており、そこには大海原が夕日に反射してキラキラと輝いていた。



「海だ!!」

自然と笑顔になる。
さっきまでの恐怖はなくなり、海の輝きにも負けないくらいの輝く眼差しを海へと向ける。


海は繋がっているからこの海を渡って行けば家に帰れるかもしれない!
でも悪魔の実を食べてしまった自分は泳げないんだ…

と、一人そんな事を考えていた。
どうしたら家に帰れるかと、普段あまり活用しない脳をフル回転させながら良い方法はないかと頭を捻る。



そうこうしているうちに日が沈み辺りが暗くなった。


何かの鳴き声や何かが動く音に敏感に反応する。
こんな暗い森の奥深くにたった一人というのは相当心細い。




家に帰りたい

腹減った

今頃家ではエースが夕飯の支度をしているだろう。



エースは心配してるかな?

俺を探してくれてるのかな…

エースに会いたい。



鳥なんて追いかけなければ良かった。森になんて入らなければ良かった。
泣いてもどうしようもない。
いつもならエースに慰められ泣き止むのだが、今日は一人で泣き止むしかなかった。






ふと目の前の海を見る。

大好きな海は夜なのにキラキラと輝いていた。
何で夜なのに輝いているんだ…?


空を見上げると空いっぱいに散りばめられたいくつもの星達が明るく光っている。



あまりの壮大さに口を開けたまま暫し星に目を奪われる。広い海の上に輝く星空はいつも見ている星のとは違く、なんだか特別に見えた。





地に寝転んで空を仰ぎ見る。
さっきまでの恐怖はもう忘れ、星を数えるかのように一つ一つ目で追っていく。













すると、一つの星が大きな弧を描いて流れた。




「あッ!!!流れ星だ!!!!」

流れ星と言ったら願い事だ。
しかし突然流れるので願い事なんて考えている筈もなく、流れ星なんかとっくに流れ終わっているのにルフィはえーっと、えーっと、と願いを考えている。



「海賊王に…」

“海賊王になれますように”

そう言いかけたが途中で止めた。





「エースに会いたいー!!!」

大きな声で空に向かって叫んだ。

願い事は3回言うんだっけ?
流れ星はもう無い。
無数の星達が静に輝いていた。


何だか急に寂しくなりまた涙が出てきそうになる。しかし上を向き零れそうになる涙をグッと堪える。




















遠くの方でエースの声が聞こえたような気がした。

体が揺れ瞳を開ける。

俺はいつの間にか眠ってしまっていたみたいだ。



目を開けると息を切らし泥まみれのエースが心配そうな顔をしていた。


「おい!!ルフィ!?」


「…エース?」


「…良かった…。大丈夫か!?」


「うん…。俺……寝てた。」


「はぁ!?」


「星見てたら何時の間にか寝ちまってた…。」


いつの間に寝ちまったんだろう。
たしか星を見てて…
あ!!流れ星見たんだった!!!!


「エース!!俺、流れ星見たんだ!」


「あ゙?」


俺はエースに一部始終を話した。

「帰る道分かんなくなっちまって…段々暗くなってきちまうし怖くなってたたんだ。」

そう言えば最初は暗くなってきて怖かったんだっけ。

だけど…


「…。」


「だけどな!!空がすんげぇ明るかったんだ!!夜になっても周りが見えるのは星のお蔭なんだな!!」


「…ああ。昼間太陽が輝くのと同じで、夜は月や星が俺達を照らしてくれてんだ。」

エースが俺の髪をくしゃくしゃとかき分けながら言った。


「だからだな!!俺全然怖くなくなったんだ!!そんで此処で星見てたら流れ星が流れたんだ!!」

流れ星見て、願い事をしたんだ。


「そんでな!俺願い事したんだ!!でも3回も言えなかった…。」


「流れ星は速ぇからな。願い事なんてまず無理だろ。」


「でも流れ星は願いを叶えてくれたぞ!!」


「え?」



きょとんとしているエースに俺は自慢気に言ってやった。


「エースが迎えにきてくれた!」



するとエースは一瞬間が抜けた様な顔をしたが笑ってくれた。

「ははッ、そりゃ流れ星がサービスしてくれたんだな!!」


俺もつられて笑ってしまう。










2人で寝込んで空を見た。

空一面に星が散りばめられ、きらきらと輝いている。




するとキラッと星が1つ流れた。



「「あッ!!」」







「流れ星だ!!」

俺は素早く立ち上がり空に向かって星まで届くように大きな声で叫んだ。



「エースと一緒に海賊王になれますようにーッ!!」




流れ星は既に流れた後だったけど願い事は星に届いたような気がする。
なんだか少し自信があった。

「きっとまた流れ星はサービスしてくれるよな!!」

エースに笑いかけた。


「ああ!!」









空では星達が静かに輝いている。





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