□〜隣町〜【D兄弟】
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今日は兄弟で隣村まで来ている。


エースはルフィを連れて来たくはなかったのだが、ルフィが大人しく留守番するはずもなく仕方なく連れてきたのだ。




エースが何故ルフィを連れて来たくなかったかと言うと、この前兄の用事で一緒に此処に来た時、エースがほんの数分目を離した隙にルフィが勝手に何処かへ行ってしまったのだ。


知らない地にルフィを一人で放っておくと後で厄介な事に成りかねないのでエースは自分の用を後に探し回った。



漸く見つけたルフィがいた所は食べ物屋だった。

ルフィは既に何食か平らげていた。



無論ルフィはお金を持っていなかったのでエースが代金を払うはめになった。

そのおかげでエースは用事を済ますことが出来ず、今日またこの村に来たのだった。





「大人しくしている、勝手に行動しない」を条件に連れてきてもらったルフィだが、いつもと違う珍しい街並みにキョロキョロと目を輝かせ今にも何処かへ飛び出して行きそうだ。


そんな弟の手を引き早く行くぞとを促す兄。


何とか目的地に着きエースは自分の探している物を探す。

そこは本屋だった。

そこにルフィの興味の引くものは無く、ルフィはすぐに飽きてしまった。



真剣に品物を見極めている兄にちょっかいを出したり、店の中をぐるぐる歩き回ったりして落ち着きのない弟を鬱陶しく思い「じっとしてろ!」などと言っても勿論聞くはずもない。




店の外ではこの村の子供達が何やら楽しげに遊んでいる。


店の窓にへばり付いてそれ見ているルフィにエースは

「店の前から離れないなら行ってもいいぞ。」

と言うと退屈そうだったルフィの顔がぱあっと明るくなり「うん!」と答え早々に外へ出て行ってしまった。



この方が兄にとっても弟にとっても一番良い状況だ。

初対面の友達にも関わらずルフィは既に打ち解け五月蝿く騒いでいる。


ルフィの騒ぐ声は大きいので店の中にいる兄にもちゃんと届く。


エースは漸く集中する事が出来た。









何分かして欲しい物が決まり会計を済ませ店の外に出てみると子供達が何やら円くなって歓声を上げている。


どうやら誰かが喧嘩しているようだ。


エースはもしかしたらと思い近くの少年に話かけてみた。


何でもさっき遊んでいた子供達の中に年上のグループが絡んできたらしい。

女の子の髪を引っ張ったり弱い奴を脅したりしているのを見かね一緒に遊んでいた奴が喧嘩を売って年上の相手に一人で挑んでいると言う。


エースは半ば確信していたもの違う可能性を信じ子供達の歓声が上がる中心を見た。


やはりそこにはルフィが自分より体格の良い相手と睨み合っていた。

この村の人達はルフィのゴムゴムの実の能力や桁外れの身軽さを知らない。

ゴムのルフィに攻撃しても効かないと言う事を知らずに殴りかかってくる奴。

それを見事な身体能力でかわすルフィに子供達は歓声を上げていたのだ。

腕を伸ばしたりはしていないので誰も能力者ということには気づいていないだろう。



だがその運動神経は人間離れしている。

フーシャ村の中にはルフィを気味悪がる人も少なくないがこの村の子供達はただ単に凄いとしか思っていないようだ。




相手はこの村のガキ大将らしい。いつも年下の子供達をいじめているグループのリーダーで喧嘩には負けたことがないと言う。

それなのに余所の村の自分より年下の相手に負けるなど屈辱的だろう。


ルールも正々堂々も関係無く相手は仲間に合図しルフィに四人で殴りかかってきた。



流石のルフィも自分のニ倍はある相手四人から逃げるのは難しく物の見事に吹っ飛ばされてしまった。


ゴムなので痛くは無いものの悔しさで唇を噛み締め目には涙を浮かべている。







「卑怯だぞ!」

とギャラリーの誰かが言う。

「誰だ!今口出したのは!」

と今度は周りで見ていた子供達の方へと睨みを飛ばす。

一人の男の子の胸ぐらを掴む。男の子は恐怖で泣いている。


ガキ大将はルフィにやらっぱなしだった怒りを解消しようと腕を大きく振りかざした。




だが今度はエースが黙っていはなかった。

殴りかかろうとする腕を掴み止める。


「エース!」

ルフィが呼ぶ。


ガキ大将の男の子を掴む腕が緩み、仲間四人と今度はエースと向かい合う。

ルフィ程では無いが身長差はあり如何にも不利な状況に見える。



「何だてめぇ、やんのか?」

と言われエースはニヤリと笑い

「弟が殴られたときちゃ兄貴は黙ってられねぇよ。」

と言った。すると相手は兄と聞き少し動揺した。
幾ら殴り飛ばしたとは言え、卑怯なやり手四人でやっとだ。散々やられっぱなしであの運動神経の弟の兄ときたらただ者ではないだろうと誰もが悟った。




「あの猿の兄貴かよ。弟と同じ目にあっても知らねぇぞ!!」

一人そんな心配などせずエースに立ち向かっていく馬鹿なガキ大将。



殴りかかろうとするも見事全てかわされてしまう。

四人で挑もうとも誰一人としてエースに絣もしない。





買い物袋を片手にもう片方の手はポケットに入れてサンダルでひょいひょい飛び回るエースにその場にいた全員が驚きのあまり口を開けている。


直接エースは相手に手を出さなかったのだが相手の体力に限界が来てガキ大将達は逃げていってしまった。


満足気に笑うエース。

「すげぇな!!」

とスッキリしたと言う表情で周りで見ていた子供達が寄ってくる。

「凄い凄い!あんたら何者!?」

などとエースとルフィに聞いてくる。




エースがルフィを見るとルフィは何だか納得いかないと言った様子だった。

自分は殴り飛ばされて兄が彼奴等に勝ったことが気にくわないのだろう。

いつも兄には勝てないと言った面持ちで頬を膨らませている。













そしてエースとルフィは親しくなった友達に別れを告げ、手を振り村を出た。



今日もまたルフィのお陰で一苦労したと思いながら、帰り道眠いと言う弟をおんぶして家へと帰って行った。


だがこんな苦労だったら悪い気はしないものだった。





 

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