短編(学園)
□君と一緒なら
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柚「◯◯◯〜!」
名前を呼びながら笑顔で走って来る柚香は、座って居る◯◯◯の背中にガバッと抱きつく。
『なに?重い。痛い』
柚「ちょっとー!重いってなに!?酷い!そんなに重くないでしょ!!」
耳元でギャンギャン騒ぐ柚香に、うるさい。と額にデコピンを食らわす。
デコピンをされ、さらにギャンギャンと騒ぐ柚香に◯◯◯は溜め息を吐く。
柚「この前さー子供の名前の話したじゃない?」
『蜜柑にするって話?』
柚「そうそう!あたしの子供と◯◯◯の子供!同級生にしたいなぁ〜」
ふ、と笑う◯◯◯。
『そんな上手くいかないだろ』
柚「いいじゃん!協力してよ〜!!」
『はい、はい』
柚「適当に返事しないでっ!!」
柚香泣いちゃう!と怒りながら涙を流す柚香を◯◯◯は無視する。
酷いと、またギャンギャン騒ぐ柚香にゴンッ!と◯◯◯の鉄拳が落ちる。
柚「っ〜…イタイ…」
『うるさい』
柚「もうっ!◯◯◯冷たい!!」
頬を膨らまして、そっぽを向く柚香。
全く喜怒哀楽が激しい奴だと、◯◯◯は溜め息を吐く。
柚「◯◯◯は、子供出来たら何て名前にしたい?」
『………』
キラキラと笑みを浮かべて、期待の眼差しを向けてくる柚香に、冷たい視線を送る。それでも、キラキラを崩さない柚香に、また溜め息を吐く。
柚「あっ!まず、男の子がいい?女の子がいい?」
『……。どっちでもいい』
柚「えぇ〜!適当っ!あ、でも…◯◯◯は最初に男の子っぽい!」
聞いといて勝手に1人で喋る柚香。
柚「で?どんな名前がいいの?」
『お前は忙しい奴だな』
◯◯◯は遠くを見つめた後、ぽつりと呟いた。
『………奏』
柚「かなで?」
『そう。奏』
柚「素敵な名前っ!なんで!なんで!」
理由まで聞くのかと◯◯◯は冷やかな目を向ける。
『…周りが安らげるような、優しくて明るくて、誰からも愛される子になって欲しいから』
柚「ほぇ〜…」
『………』
ゴンッ…!
柚香の頭に鉄拳が落ちる。
泣きながら頭を抱える。
柚「なんで殴るの〜…」
『イラっとした』
柚「酷い。理不尽だ。鬼畜。鬼」
『あぁ?』
柚「…ごめんなさい。」
2人のこのやり取りもいつもの日常。
柚「奏と蜜柑!仲良くして欲しいなぁ〜」
『蜜柑いじめられて泣いてそう』
柚「◯◯◯に似て、冷たそう」
『本当に雪だるまにすんぞ』
柚「はい。スミマセンデシタ」
土下座して謝る柚香。
◯◯◯は分かればいいと、視線を戻す。また遠くを見つめる◯◯◯に柚香はどうしたの?と不思議そうに顔を覗く。
『…未来が、幸せだといいな』
何を考えているのか、哀しそうな、愛おしそうな表情の◯◯◯を柚香は見つめる。
『柚香が幸せそうに笑って、和泉ちゃんと結婚して蜜柑が産まれて…みんなが幸せになれる日がいつか来るといいな』
『あたしは、柚香が幸せならそれでいい』
微笑む◯◯◯に柚香はガバッと抱きついた。
柚「みんなで幸せなるの!!あたしも◯◯◯が幸せであって欲しい」
『なんで…お前が泣くんだよ』
柚「◯◯◯が泣かないからっ…!代わりに泣いてんのっ!」
『…バカだな』
よしよし、と子供をあやすように◯◯◯は柚香を優しく抱き締める。
『未来が…楽しみだな』
柚「うん…」
2人は顔を見合わせ笑った。
いつか、みんなで幸せに過ごしている未来を想像しながら、未来に夢を抱いて2人は笑い合う。
どんな未来が訪れようと、2人一緒なら…みんながいれば乗り越えられると…
柚「この先、何があっても親友だよね?」
『…さぁな』
柚「ひっどーいっ!」
プンッ、と怒りながら帰ろうとする柚香に◯◯◯は微笑んで、小さな声で呟いた。
『お前は、誰よりも大切な親友だよ。柚香』
だから、誰よりも幸せであって欲しい…そう願う。
柚「◯◯◯〜!帰ろうー!」
早くー!と手招きをして笑う柚香。
◯◯◯は、重い腰を上げゆっくりと歩き出す。
『今、行くよ』
未来はきっと…
明るい未来でありますように。
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