桜の花が舞う季節
□[07]Pupil of sapphire
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少しばかり一護と離れたあたしは、ちょっとした野暮用を済ませ、瀞霊廷内の状況を把握しながら一護の所へ向かっている。
猫の姿はラクで良い、見つからずに瀞霊廷内を走れる。あたしは屋根を飛び飛び、一護の元へと急いだ。
『……!?』
漸くして一護の元へと着いたあたしは驚愕した…斬魄刀を片手に持ち、至る所から血を流しケガをして立ち尽くす一護。
ケガ云々(うんぬん)より、あたしが驚いたのは一護の近くで倒れている人物の方だ。
両者が血を流し、かなりの深手を負っていた。戦闘の激しさが、その場に居ずとも伝わった…
『一護…!』
護「せ…んぱい…」
あたしの姿を確認するなり、安心したのか一護もその場に倒れ込んだ。
あたしは人型に戻り、急いで一護に駆け寄った…
『酷いケガ…どうして逃げなかったの…!!』
護「…逃げたトコで…何も変わんねーから…」
この子は、自分の信念に真っ直ぐ生きている。死の恐怖が無いのか?
…違うか、死は怖いが約束を果たすために逃げずに戦っているんだ。目の前の勝てるかどうかも分からない戦いを…死と隣合わせで、立ち向かっているのか。
何て、強い子なんだろうか…
『…一角に勝つなんて、(どれだけ成長するのかしら…)』
護「知り合いなのか…?だったら、そいつ…助けてやってくれよ」
…お人好し。
一護は馬鹿だと思う。普通は敵を助けることなんて、まずしないだろう。
まぁ、一角を死なせるワケにもいかないし助けるけど。
『…バカ一護』
ゴンッ…
護「いてっ…」
軽く殴って、あたしは2人の治療に入った。
そう言えば、一角って鬼灯丸の鞘に…血止め薬を隠してたような。
『…癒しなさい“月並”』
月並に一護の治療をしてもらっている間に、あたしは一角の鬼灯丸を手にとった。
鞘の下の部分を開ければ、やはり血止め薬が出てきた。あたしはそれを2人の傷に塗った。
『ありがと月並、助かったわ』
護「この血止め薬、よく効くなー」
一護の方は割と大丈夫そうだ。深手は負っているが、死ぬほどではない。
問題は一角…今、少しは治療をしているけど、目を覚ました時に動かれては困る。迷惑だ。だから、多少治す程度にしておいた。
『…馬鹿なのは変わってないね、一角』
一角を手当てしながら思っていた…何だか懐かしいな、と。
昔は、ケガする度に治してあげたモノだ。眠るハゲを見て、あたしは小さく笑みを浮かべていた…
* * *
――――…
角「……なんで俺は生きてんだ?」
あれから少しして目を覚ました一角は、きょとんとした表情でそう口にした。
護「目ェ覚めたか」
一角は声のする方に顔を向けた。
護「よっ」
『にゃあー』
角「……一護、てめぇ…なんでまだ、そんなとこに…それに何だ、その猫は…!!」
護「イヤー初めて知ったぜ」
一護は一角の言葉を無視して話し出す。
●●●はというと、猫化し一護の肩に乗っていた。
護「解放された斬魄刀って、持主が気絶すると元に戻るのな」
角「!俺の鬼灯丸…!てめぇ…返っ…」
護「別に盗りゃしねーよ。ここの血止め薬をちょっと借りただけだ」
『にゃあ』
護「まぁ、俺とあんたに使ったら全部無くなっちまったけどな」
血止め薬はきれいに無くなっていた。
護「しっかし、めちゃめちゃ効くなーこの薬」
角「!!」
一角は自分の肩から腹にかけて出来ていた、大きな斬り傷を見て驚いている。
傷には血止め薬がベッタリと塗ってあった。
角「てっ…てめぇ!何てことしやがった!!」
護「何だよ?勝手に使ったからって、そんな怒るなよ」
角「そういうことじゃねぇっ!!くそっ…おかしいと思ったんだ!!あの出血で死んでねぇなんて!!」
助けてやったのに、煩い奴だ。
角「助けられて永らえるとは、とんだ恥曝しだぜ…!」
角「くそ…体さえ動きゃてめぇを叩っ殺してるところだ…!!」
動けるくらいまで治さなくて良かったと、●●●は思った。
護「ちぇっ、何だそりゃ。そんなこと言われんなら、助けなきゃ良かったぜ」
『…にゃ、にゃあ(言わせとけ)』
護「…まぁ、感謝しても、しなくても、どっちでもいいや」
角「…てめぇらは、何しにここに来た…」
一角の質問に一護は答える。
護「朽木ルキア」
角「朽木?…例の極囚か。お前らあんなモンに何のようだ?」
護「助けに来た!」
角「あァ!?」
ドン…と一護はそう言った。
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