novel
□プロローグ
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全ての始まりは満月の夜。
虚圏の統率者である藍染様は砂漠でお散歩をしていました。
全ての事象は手の内にある藍染様にとって気候を変化させることなど造作もないのですが、何故かこの日の夜空は、藍染様が意図せずとも沢山の星で輝いていたのです。
「不思議だ」
首を傾げながらサクサクと砂漠を進んでいた藍染様は立ち止まりました。そして、ふと空を見上げた時、一つの星が流れ…。
藍染様は慌ててお願い事をしました。
「可愛い子供を下さーい!」
そう、藍染様は子供が欲しかったのです。
忠誠を誓った十刃の皆。最初こそはいい子だったのですが、時が経つにつれてその態度は冷たくなっていきました。
藍染様は皆と仲良くしたいのに、ついには十刃同士でもいがみ合いが止まらなくなってきたので心を痛めています。
そんな心を癒すために望んだ願いがこれです。
「よーし」
藍染様はうんうんと頷き、踵を返しました。
と、その時。
キュイーン…ドーン!!
「な、なんだ?!」
小さな隕石が落ちてきたのです!
藍染様は慌てて落下した場所へ向かいます。煙を纏った小さな蒼い球体。恐る恐る手を伸ばした瞬間…ピカッと閃光を放ち、球体が割れました。
そこには…
「…おお…!!」
美しい浅葱色の子供が。
宝石を埋め込んだ様な大きな瞳で藍染様を見上げています。
「…??」
「なんて可愛いんだ…!」
藍染様は大喜び。
「こんにちは。私は藍染だよ」
優しく話しかけると男の子は目をぱちくりさせます。
「あい…ぜん…?」
「君の名前は?」
「じょー!」
「ジョー?」
「ぐいむじょーじゃがーじゃっく!!」
「グイムジョー・ジャガージャック?」
「ちがうよ、ぐいむじょー!」
「…?…り…?…グリムジョー?」
「そう!」
小さな口で一生懸命名乗る男の子に藍染様は思わず顔を押さえました。
(ぐっじょぶ!!!!)
このグリムジョーが何故空からやってきたのかは不明でしたが、右頬にあるのは確かに仮面。藍染様は決心して言いました。
「グリムジョー、私と一緒に来ないかい?」
「ん?」
「美味しいものも、暖かいものも、なんだってある」
「そーなの?行く!じょーを連れてって、あいぜんたま!!」
「ぶっっ」
藍染様は吹き出す鼻血を拭くとグリムジョーを抱き上げ、虚夜宮へと歩き出しました。
こうしてグリムジョーは十刃の仲間入りとなるのです。
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