脱色N

□ご用心を
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「なぁなぁこれなに?」

ロイはぴょこぴょこと二人の周りを跳ねた。

「いいですかグリムジョー」
「おう」

「え、無視?」

「身の危険を感じたら躊躇せずにこのボタンを押すのです」

シャウロンはジェスチャーしながらグリムジョーに手元の器具を説明した。


「ふーん。んで、押すとどーなんだ」
「サイレンが鳴ります」
「ほう」
「するとこれの受信機に連絡がいきます」
「…?」

グリムジョーは首を傾げる。

「受信機を持っているのは私達セスタ従属官」
「えっ俺初耳」
「お前には渡していません」
「ええ?!」
「…お前等が?」
「…ですが私達だけでは心許ない。そこで一部の十刃の方々にもご協力頂きました」
「エッ十刃ぁ?!」
「スターク様、バラガン様、ハリベル様、そして市丸様にも」
「すげぇ…な」

そうそうたるメンバーにグリムジョーの頬はひきつる。するとシャウロンは表情を険しくさせた。

「いいですか、相手は変態です。市丸様や十刃上位の方々でも敗れる恐れはありますが、いくら貴方が強いからといって一人で闘うことはいけませんよ…!」


いつもの冷静さを欠いた部下に低い声で捲し上げられ圧倒されたグリムジョーは無言で何度も頷いた。

話に一息入った所を見計らってロイが叫ぶ。


「おぃい!なんで俺だけ仲間外れにすんだよ〜!」
「決まっているでしょう。お前がグリムジョーを助けに行ったところで返り討ちにされるのが目に見えているからです」
「……な、なんだこの敗北感…」


ずーんと落ち込むロイを他所にグリムジョーは手渡された防犯ブザーを見つめると歩き出した。

「グリムジョー、」
「…助けられるのは虫酸が走るが…あの変態達から身を守るためにゃ仕方ねぇな」

それと、と付け加え振り返る。


「折角お前が寄越したんだ…持っててやる」


艶やかな流し目の後、響転で宮を去った。

「ひゅー!相変わらずかっけぇなぁ〜!」
「……し、心配だ…っ」




特にやることもなく、だからといって部屋に籠っているのも致し方ない。そういう時はグリムジョーはブラブラと廊下を歩く。

「なんか面白いことねェかな」

「やぁグリムジョー」

「ノイトラに漫画でも借りっか」
「おいシカトすんな」
「それかアーロニーロにDVDを…」
「聞こえてるんだろ、ねぇ、ちょっと」
ズルズルズル
「いや、市丸の…」
ズルズルズルズルズル
「ねぇってばぁあああ無視しないでぇぇ」
「は、離れろ!」バキッ
「ぐぇっ」

足に掴みかかり引き摺られていたザエルアポロを踏みつけるとグリムジョーはパンパンと袴をはらう。

「僕は埃かい」
「いや、変態」
「…ぐすっ」
(面倒くせぇな…!)

「なんか用か」
「暇なんだろう?」
「あ?」
「僕と遊ばな「無理」」
「はやっ。もう少し悩んでくれよ!」
「誰がてめぇなんかと遊ぶか!自殺志願者でも相手にしとけ!!」
「そんなネガティブな人とハッスルできるか!!」
「お前ぇの言う遊びは俺等世間一般の遊びとは言わねぇんだよ!」


じゃあな、と吐き捨てると歩き出した。しかし、響転で先回りしたザエルアポロが壁に手を張りそれを許さない。

「!」

ずいっと顔を近づけ、怪しく微笑む。

「僕の研究を悪く言わないでおくれよ…」
「どけピンク頭!」
「…ふふふふ!君の髪もピンクに染めてあげるよぉぉ…!!」がばっっ
「うぉおっ?!」

襲いかかるザエルアポロ。グリムジョーはシャウロンから預かったブザーのボタンを押した。

ビーーーーー!!!

「な、なんだ?!」

「せぃぃぃぃぃぃ!!!!」
ドクシャッ
「ぶはぁっっ」ズシャァアア
「うぉぉぉ?!」

どこからともなく現れたハリベルによるラリアットでザエルアポロは後方へ吹き飛ぶ。


「ハ、ハリベル」
「無事かグリムジョー」
「お、おう」

ハリベルはグリムジョーの頭を撫でると斬魄刀を抜きながら振り返る。

「げほっげほっ!なにすんじゃいコラ!!」
「此方の台詞だ…お前の汚いピンク色に染め上げる、だと?」
「…え、ちょ、ま、」
「世界三大美色と呼ばれるグリムジョーの浅葱色が…傷んだらどうしてくれる!!!」
「え、そこ?」

ジャキンッ!

「ぎゃぁあああ僕の髪がぁあああ」
「お前など坊主より面白い髪型にしてやるぅううう」

ジャキンッジャキンッ!

「やめっあっ…ぁあああーーー……」


響転しながら攻防を繰り返す二人を見送りグリムジョーはブザーを掲げる。

「す、すげぇ…」


このボタン一つである意味核兵器以上の効果を生み出すブザー。恐るべきそれをゆっくりとしまおうとした時、

「よぉーグリムジョー!」

「いっっ?!」

ポチッ…

「あ」


…ビーーーーー!!!




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