記念小説
□アンダーワールド
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慌ただしく婚礼の準備が進んでいった。
ルキアと一護はあれから今まで通りの主従関係を貫いていた。
時折、互いを見詰める瞳が揺れ動くことはあるけれど―――
互い何も口にすることはなかった。
この先触れる事も触れられる事もないだろうが、お互いが最愛の人だと解り合っている。
それだけで十分だった。
婚礼を三日後に控えた日、突然ルキアが倒れた事で事態は思わぬ展開をみせる。
「―――ルキアが懐妊しているだと!?バカな・・!婿とはまだ会ってもいないのだぞ!?相手はどこの貴族の輩だというのだ!?」
「恐れながらお館様・・・お相手は残念ながら貴族のご嫡子ではないと存じます。その・・大変言い難いのですが、お嬢様のお相手は人狼かと・・・」
「何という事だ・・・!」
***
何の前ぶれもなく突然大勢の同胞に囲まれ、一護は捕えられた。
そのまま地下に連れて行かれ事態が飲み込めぬまま鎖に繋がれ拷問を受けた。
散々痛めつけられ弱り切った処に長がやって来た。嫌悪と怒りと屈辱に燃える眼で一護を睨みつけた。
「この、薄汚い狼無勢が・・!飼い犬の分際で主に噛みつくとは何という恩知らずな奴だ・・!許されると思うなよ、お前には死んでもらう。だがただでは殺さぬ。その前に自分が犯した罪の大きさを貴様に見せてやろうぞ!」
ルキアとの事がばれたのか・・!?
しかし何故今になって!?
痛みきった身体を鎖で引きずられながら一護は地下室から、城の外にある荒れ地に連れてこられた。
「ルキア!?」
そこに、ルキアが居た。
杭に鎖で縛られ、磔にされた状態で―――
「よく見ておくのだ、人狼。娘はお前と犯した過ちのせいで死ぬのだ。忌むべき日の光に晒されて!」
長の残酷な言葉に一護は目を見張った。
「やめろ!ルキアはあんたの娘じゃないか!掟を破った罪なら俺ひとりで償う!俺を・・俺だけを殺せば済む話だろ!」
「黙れ!誇り高き我が一族の、しかも長である私の娘が下僕の獣と同衾したなど、恥のなにものでもないわ!しかもあろう事か背徳の証である忌み子を腹に宿すなど・・そのような屈辱許せる訳がなかろうが!腹の子共々塵に還してくれる!
お前はその場で愛した女と腹の子が滅びるのを見届けるがよい。喜べ、お前は直ぐには殺さん。自ら死を乞うほどのあらゆる苦痛をその後与えてやる・・!精々日が昇るまで自分たちの犯した罪を悔いておれ・・・!」
呪詛のような呪いの言葉を吐いて長は去って行った。
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