記念小説

□トライアングル・コンプレックス
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 「シロの徒然日記」





よう!俺の名前はシロ。

姿はネコだが心は虎だ。嘘だ。

みんな俺を見て「かわいい〜」とか言うけど、冗談じゃない。
俺はかわいいのではなく格好良いのだ。
しいて言えば、俺をそう呼んで抱き締めていいのはこの世に唯一人。

俺の女神、ルキアだけだ。


初めての出会いは運命だった。
冷たい雨に打たれ、命の危険に晒されていた俺を救ってくれたルキア。
ルキアの大きな瞳と目があって、その温かい胸に優しく抱かれた瞬間、俺は恋に落ちた。


一生に一度の恋


それなのに・・。


ルキアの隣にいつもいるこいつはルキアのなんなんだ!?




始めは最悪だった。

ルキアに抱かれ、連れて帰られた俺は当然ルキアと一緒にいられるものと思っていた。

けれど俺が連れて来られた家はルキアと一緒にいた眼つきの悪い、おめでたい頭の色の男の方だった。


「それではな、ちびすけ。一護の家でゆっくりと休むのだぞ」

「ニャーニャー!(ルキア!ルキア!)」


俺の叫びも虚しく、ルキアは行ってしまった。



その後、“シロ”と名づけられた俺は、不本意ながら強面の男二人との共同生活が始まった。


ルキアは毎日のように俺に会いに来てくれたけど(ルキアも俺が好きなんだとこの時確信した)、俺はこんな男臭い所に住みたくなかった。

・・・飯はうまかったけど。


毎日ヒゲ男がうんざりするくらい構ってくるし。(月黒パパは動物好き)

・・・寝床はふかふかで気持ちいいけど。



俺は何度となくこの監獄のような住処を脱出して、お隣に住むルキアに会いに行ったものだ。

それなのに、直ぐにまた連れ戻されてしまう。
ああ、ルキア。俺たちロミオとジュリエットのように引き裂かれる、なんて悲しい運命なんだ。


最大の壁はルキアの家にいる大魔王だ。

あれはやばい。目を合わせただけでこっちが石にされちまう。
遠くからでもこれなのに、近距離で遭遇してしまったらいったいどうなるのか・・。

黒崎の家で良い事といえば大魔王がこっちには来ない事ぐらいだ。


それでもルキアに会いに行く俺の男心、ルキアなら分かってくれるよな!


(注*白哉さんは猫アレルギーで猫は大の苦手。本当は結婚を決めた愛娘が婚約者と二人きりになる事にやきもきして邪魔をしに行きたいのだが、猫バリアーがある為黒崎家には近づけないのだ。シロ猫は自分の存在が結果的に一護を助けていることに気が付いていない。よかったね、一護!)




それから少しして、俺は引っ越した。

新居はまあ、前ほど広くはないけれど、そんな事はどうでもいい。


ルキアと一緒に暮らせるようになったのだ!


・・・オレンジ頭もおまけについて来たけど。



「あのなあ、シロ。この家の主は俺で、ルキアの旦那も俺なんだからな。いいか、ルキアは俺のものだからな!」


事あるごとに一護は喧嘩を売ってくる。


何言ってやがる。それは俺のセリフだ!


俺を摘み上げて、眉間に皺をいっぱい寄せて威嚇する一護の顔にシャッと、一発パンチをお見舞してやった。

一護の眉間にはきれいな三本ラインが刻まれ、痛がる一護にざまーみろ、と(心の中で)舌を出した。


「痛ってーな、この野郎!」


大人気なくムキになる一護とドタバタと喧嘩が始まった。

そこにルキアが仲裁に入る。



「こら!よさぬか一護!まったく、貴様ときたらシロ相手に本気で喧嘩するなど大人気ないにも程があるぞ!
怖かったな〜シロ。可哀想に、おやつでも食べに行こうな〜」


怒られる一護とは反対に俺はルキアに優しく抱き上げられた。


「いやいや、実際痛い目にあったのは俺だから!」


そう言って眉間の爪跡を必死に指差す一護を無視して俺を抱いたままルキアは台所に向かった。

ルキアに相手にされずがっくりと項垂れる一護。
そんな情けない一護の姿をルキアの肩越しから優越感に浸りながら俺は見ていた。



お前がこの家の主だ〜?この家で一番強いのはルキアじゃねえか。

そしてお前と俺のこの差。


どうだ、一護。やっぱりルキアは俺の事が好きなんだよ!



この家での生活はすこぶる快調だ。

そんな俺にもひとつ不満な事がある。



ルキア(と一護)の寝室に入れてもらえない事。



いや、厳密にいえば一度ある。

あれはこの家に越してきて初めての夜。
俺がルキアの隣で寝ていたら、ルキアに大きな腕が被さって、ルキアを締め付けてきたのだ。


(ルキアが危ない!)


そう直感した俺は、その腕を爪と牙でルキアを護る為攻撃した。
俺は命がけでルキアの為に戦ったのだ。


それなのに、一護に部屋から摘み出されてしまった。

ルキアも何故か苦笑しながら「ごめんね、シロ」と言って、それ以来俺を寝室に入れてくれなくなった。



俺はルキアを護っただけなのに、何でだ!?



その疑問と不満は今でも解消されず、理由も不明のままだ。
誰か、教えてくれ。



ともかくこの家の主は、我が女神・ルキアで、次に俺。

で、ず〜と格下に一護という順番だ。



テリトリーの中での力の序列は超重要だから憶えておくように!



(終わり)



あとがき→

「トラ・コン」番外編でした。
一護vsシロのルキア争奪戦はこの先も続くのでしょう・・。
がんばれ一護!相手は猫だ。白に比べたら目じゃないはずだぞ!?
おそらく・・・;;

シロ猫視点でのこの番外。まったく書くつもりなどなかったのですが、先日相互サイト様で『雪月雑貨店』のみなぎ様より、おもわぬ贈り物を頂戴しまして・・。
それが今回、扉絵に飾らせて頂きました「トラ・コン」エピローグで書いた結婚式のイチルキだったのです!しかも嬉しいシロ付きで!!
もう、ほんとに大感激ですよ!
なんて幸せそうな二人なの!しかもシロ猫、餡子の想像通りです!
あんまり上手く撮影出来なくて、申し訳ない;;
みなぎ様ありがとうございました!
ささやかですが、勝手ながらこのお話でお礼とさせて頂きました。
よろしければみなぎ様のみお持ち帰り下さいませ。


2010・6・3 餡子
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