過去拍手集

□佐×幸 3月前半
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ニッコリと笑っているが、佐助の目は冷たく鋭利な刃物のようだ。


「佐助‥ 何を…」

「言葉のまんまだよ。独眼竜をこの世から抹殺する…」


(あの者を消す? そんな事が…)


佐助の言葉に、幸村は戸惑いを隠せない。

天下を目指していれば、いずれ奥州とも戦になる。そして伊達政宗はお館様の前に障害となって現れるだろう… それを今のうちに、脅威となる前に討ち果たすは自然な事。
そう‥分かっているのに、出て来た言葉は意外なものだった。


「あの者は強い‥ そう簡単に討てるはずもない…」



佐助の強さは知っている。だがそれ以上に、あの者の振るう刃は…


「それは俺様を心配してくれてるの? それとも、独眼竜のほう?」

「何を馬鹿な事をッ! 何故某が敵大将の心配などしなければならぬのだ!!」


佐助のあまりにもふざけた物言いに、幸村は激昂する。


「ごめんごめん旦那。そんな怒んないでよ。ただ、旦那の真意が知りたかっただけだから‥」

「某の‥真意?」


訳が分からないという顔をすれば、佐助はバツ悪そうに笑った。


「っていうか、俺様の嫉妬なんだけどね。」

「嫉妬‥??」



ますます分からなくなった幸村の頭には、見えない疑問符が二つ三つ浮かんでいた。


「旦那の高ぶりは、大将と軍神のそれと同じだろ? 独眼竜と天下の趨勢関係無しに、ただ純粋に戦いたい… 違う?」


ビッと胸を指差されればドキリと胸が鳴った。

佐助に指摘され、モヤモヤしていた気持ちが少し晴れた気がする。


「そうか‥ そうだ、某は戦いたいのだ。何も考えず、ただ心のままに‥」

一人納得したところで、幸村にはまだ疑問が残っていた。


「しかし、その事と佐助の嫉妬と何の関係があるというのだ?」
 
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