過去拍手集
□親×幸 10月後半
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(可愛いなど、女子に言うものではないかっ!長曾我部殿は…まさか某を女子と思っておられるのかっ?
な、ならばまずは誤解を解かねばっ。)
などと、見当違いな事を考えている幸村をよそに、元親はどうからかってやろうかと心底楽しんでいた。
「ちょ、長曾我部殿、可愛いと申されても某は男子に御座るが…。」
「あ?そんなこたぁ見れば分かるぜ?」
「そ、そうで御座るな…」
(男子を女子と間違うなど有り得ぬ。馬鹿な事を言ってしまった…)
幸村は恥ずかしくなり俯いてしまった。
(フツー腹筋の割れてる女は居ねぇだろうが…
にしても、叫んで飛びかかってきたかと思いきや、顔赤くして動かなくなっちまった。飽きねぇな…真田幸村…。)
会って間もなく、大して言葉も交わしていないが幸村を『欲しい』と元親は思うようになっていた。
「なあ、アンタ…」
「某の名は真田幸村だ。」
「まあ、いいじゃねえか…
なあ真田、俺の所に来ないか?」
「…!? 何を言っておられるのか?」
「いや、正直アンタの事が気に入ったんだ。そばに居たら飽きなさそーだしな。」
「それは某に甲斐を、武田を捨てろと?」
「まぁ、簡単に言えばそういう…」
「断るっ!!」
「某が槍を振るうはお館様のため!そしてこの命もまたお館様ただ一人のものっ!!」
再び二槍を構え元親と対峙する。先程よりも強く激しい覇気が元親にもビリビリ伝わってくる。
「欲しいものは手に入れる。力ずくでもな。それが海賊の流儀ってもんだ。」
「ぬっ!?」
元親の纏う空気が変わったのを感じ、幸村は構えた。
「今度はこっちからも行くぜぇ!俺を楽しませろよぉっ!!」
轟音とともにぶつかり合う技と技。互いの獲物がギシギシと音を立てている。
「うおおおおおおっ!!」
「おらぁっ!!」
二人の炎が絡み合い、辺りを焦がしていく。どちらも一歩も引かぬ中で先に切り出したのは元親だった。
「なぁ、もっと自分の世界を広げてみてぇとは思わねーか?」
「何をっ!」
「甲斐の虎…その背にくっ付いているだけじゃぁ勿体無いっていってるんだよっ」
「ふざけるなっ!貴殿にお館様の心の深さ、はかれるものかっ!!」
幸村はぐっと槍を握り締め元親へと突き出した。
(槍が重くなった…ちぃとばかり怒らせ過ぎたか…)