企画小説
□泡沫の夢
(三×幸)
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「私に必要なのは、食事や睡眠などではない。家康を、この手で討ち取ったという事実だ。」
「みつ‥」
「同盟を結んだ以上、貴様もその為だけに働け。他など要らん。」
目的はただ一つ。
それを成すまで、止まる事など出来はしない。
それなのに、この男は‥
………――
「やれ三成、今日は不機嫌に輪を掛けておるな。」
「‥刑部…」
「虎若子に、小言の一つも言われたか?」
「煩い!黙れ!!奴は関係な‥ッ」
声を荒げハッとする。私を見る刑部の目が、愉しげに細められるから‥
だが、気付いた時にはもう遅かった。
包帯で見えぬはずの刑部の顔は、これ以上ないくらいの笑みを浮かべていたのだから。
「三成よ、ぬしは変わったな。」
「何が‥言いたい?」
「それを我の口から言ってもよいのか?」
「………」
「………」
「分かった、何も言うな。」
言われずとも、私が一番分かっている。
「ぬしの寝言など、我は今の一度も聞いた事は無いがなあ。はて、あの虎若子は何度も…「刑部!何も言うなと言っている!!」
ムキになっては負け。そう分かってはいるのに、必要以上に声を荒げてしまう。
真田の存在が、私にとって特別なものだと刑部の言葉が認識させるから‥
例え深い眠りについていようと、私の刀の届く距離に近付けば誰であろうと意識は覚醒する。
それなのに、もう何度真田に揺り起こされたか分からない‥
目を開けたとき、あの琥珀の瞳を何度間近で見た事か‥
「そう目くじらを立てる事もあるまいに。心許せる者の存在は貴重よ。」
「心許せる?私がいつ‥ッ‥」
「起こり得た事は覆らぬ。そうよのう、三成?」
「ッ……」
悔しいが刑部の言う事は正しい。心許す‥その表現が正しいかは分からないが、真田の存在に対し私の警戒心が欠如しているのは確かだ。
真田は、今まで築いてきた私を‥ この石田三成を壊していく。
読めぬ男だ。
「刑部、その目に真田はどう映る?」
「そうよのう‥ 言葉に表すのはちと難儀よな。」
「それでは答えになっていない。」
「ならば三成、ぬしはどう見る?」
私? 私は‥真田を‥