企画小説

□存在理由
(半×幸)
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益々困惑する君‥
頬を両手で包み引き寄せれば、茶水晶の瞳には僕の姿しか映らない。そう僕だけしか…







「や‥めよッ何をなさるかッ!!」







柔らかい唇を舐めれば、ビクンと即座に後ずさる。そんな反応が、僕を楽しませているとも知らずに。







「誰かと褥を共にした事は?」


「しと‥!? その様な事、某はッ…」


「無い‥ だろうね。君を見ていれば分かる。」







逃げる体を抱き寄せる。この存在全てが僕だけのもの‥ そう思うだけで、高ぶる感情を押さえ切れない‥







「貴殿は某を‥慰み物になさるおつもりか?」


「それは幸村君の捉え方次第だよ。僕を想ってくれれば、そんな悲観的な考えは無くなるはずだ。」


「貴殿を想うなど‥有り得ぬ!!」


「断言とは悲しいね。僕はこんなにも、君を想っているというのに。」







腰を抱き、唇を頬に寄せる。また暴れ出す事を予想したのに、君はされるがままだ‥

きっと、悪い事を考えているんだろうね。







「隙を突いて、僕の腰刀でも奪うつもりかい?」


「ッ!?」







耳元で囁けば、僕の手を逃れ距離を取る。その手には、しっかりと腰刀が握られていた。







「足枷とその刀‥それで僕に挑むというのかい?」


「何事も、終わるまでは分かりませぬ。」


「そうだね、その通りだ。だけどその刀は、君には扱えないよ。」







それは奪われる事を、想定して作られた物なのだから…







「ですが某は、何もせずじっとしているわけにはゆかぬ。ここを出‥て、在る…べき‥場所へ…」


「どうしたんだい?言葉が途切れ途切れだ。」







おかしい‥ 視界が霞む…







「その刀には、錯乱作用を引き起こす香が焚かれていたんだよ。鞘から抜かれた時、持ち主を襲うようにね。」


「う‥ああ…」


「だがこれからの行為を思えば、最良の道だったのかもしれない。君は素直にその体を開いてはくれないから‥」







さあおいで、君の全てをこの僕に…





………――










「ふ‥くッ…」







おかしな気分だ。竹中殿の唇が体に触れる度、粟立つ感覚‥ まるで自分の体ではないような、そんな不安に襲われる。







「可愛いね。怖いのかい?」


「ッ…あ‥」

 
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