企画小説
□sweet home
(三×幸)
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「真田!」
「は‥はいッ!!」
大丈夫、きっと大丈夫だ‥あんなに勉強したので御座るから…
ドクンドクンとうるさい心臓を無視して答案用紙を取りに行けば、先生にポンと肩を叩かれた。
「あんなに英語は苦手だったのに、よく頑張ったな!次もこの調子でな!」
先生の言葉とトーンの高さに不安は無くなって、答案用紙に目をやれば自分でも信じられないような点数が赤ペンで書かれていた。
「や‥や‥やったで御座る‥やったで御座るッ!!」
あまりに嬉しくて、その後の授業はほとんど覚えていない‥三兄に言ったら気を抜くなと怒られてしまうかもしれないけれど、早くテストの結果を報告したくて… そればかりを考えていた。
三兄は何でも出来て何でも知ってる某の憧れ‥
切れ長の瞳や無口なところから冷たい人って思われがちだけど、三兄の優しさを某は知ってる。そんな三兄をみんなに知ってもらいたい。けど、独占もしていたい…
だって三兄が、大好きで御座るから。
………ー―
「三兄ッ!ただいまで御座るッ!!」
勢い良く玄関のドアを開け靴を脱ぎ、ドタドタ階段を駆け上がる。そうして目指す場所はただ一つ。
「三兄ッ!」
ノックするのも忘れ部屋へと飛び込めばパソコンに向かう三兄がいて、白く長い指が滑(なめ)らかにキーを叩いていた。
「あの‥三に‥「階段を駆け上がるなと、いつも言っているだろう?」
「あ‥すみませぬ。つい…」
「それほどまでに、良い事でもあったのか?」
手を止め、振り返る三兄の動き一つ一つに目が釘付けになる。まるでそこだけ、別の空間の様に錯覚させるから‥
「どうした?」
「え…っと、テストが返されて‥」
鞄を漁り折り畳まれた答案を差し出せば、三兄は黙ってそれを開いた。
「目標は‥越えたで御座るよ?」
「…1点。」
目標点数は85点。そう、結果は86点だった。
「い‥1点でもッ、越えた事には変わらないで御座る!」
いつも50点いくかいかないかを彷徨っている事を思えば、これは大躍進だ。そう自信を持って見つめれば三兄の大きな手が伸びてきて、頭を優しく撫でてくれた。
「頑張ったな。」