企画小説
□distance
(政×幸)
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「なぜ… ここに…」
「Why? その答えは簡単だ。俺も幸村と、同じ想いだっただけの事だ。」
クスリと笑みを浮かべる政宗は、幸村のよく知る政宗だ。偽者などではない。
「某と‥同じとは…」
「逢いたかった。それだけだ。」
フワリと体を抱き締められれば、トクントクンと伝わる鼓動‥ 己を包む力強い腕と鼻腔をくすぐる政宗の香に、幸村は黙ってその身を預けた。
「どうした?今日は破廉恥って叫ばねえのか?」
「お望みであるならば‥なれど某は、今暫しこのまま…」
幸村がギュッと政宗の背に手を回せば、政宗は驚いたか目を見開く。だがフッと笑みを浮かべると、政宗は応えるように更に強く幸村を抱き締めた。
………ー―
「しかし、まさか幸村が起きてるとは思わなかったな。寝込みを襲おうと楽しみにしてたんだが‥残念だ。」
「それは申し訳ない…… って、政宗殿ッ!!」
とんでもない事を、サラリと言ってしまう政宗に幸村は声を荒げる。
「そのように襲われずとも、某は…」
「某は… 何だ?」
「だから‥その…」
ゴニョゴニョと言葉を詰まらせる幸村を、政宗はクスクス笑い見つめていた。
「わ‥笑わないで下されッ!」
「別に馬鹿にして笑ってるわけじゃねえぜ?つい嬉しくてな‥」
「嬉し‥い? あッ…」
首を傾げる幸村の手を取り、政宗は真剣な眼差しを向けた。
「幸村が全身で、俺を好きだと表現してくれるから‥な。」
「なッ‥あ…某がい…いつッ‥」
「違うのか?」
「う…」
(卑怯に御座る‥政宗殿の瞳は、某の…)
「幸村?」
「ち‥違わないで‥御座る‥」
紅く染まった頬でそう呟けば、政宗は「Thanks」と額に口付けを一つ‥
「ま‥政宗殿ッ!!」
「やっぱイイな幸村は。抱き締めていてくれと大胆になったり、今みたく照れてみたり… 本当なら、寝顔を見てすぐ帰るつもりだったが、どうやら無理だ。」
「政む…」
トサ…
「その目を見たら、俺は触れられずにはいられない。」
「政宗殿…」
「好きだ幸村。愛してる‥」
「ん…」