企画小説
□獲物はどっち?
(政×幸)
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「オイオイ、そんなに慌てずともゆっくり可愛がって… ちょっと待て、何のつもりだソレは?」
顔を近づけてきた幸村が、大きく口を開けばキラリと光る鋭い牙が政宗の視界に入ります。
「ゆ‥幸村、お前まさか寝ぼけてッ!?」
その事実に政宗は顔を青ざめさせますが、気付いたのが遅かったようです。
「いただくで御座らぁ‥」
「Wai…」
ガブッ!!
「ぎゃああぁぁッ!!!」
爽やかな朝は、こうして終わりを告げたのでした。
………ー―
テーブルには、耳と尻尾がしゅんとうなだれ申し訳なさげな幸村と、不機嫌そうに頬杖を付く政宗が向かい合うように座っていました。
幸村がチラチラと政宗に視線を送れば、肩口に自分の付けた歯形がくっきりと残っています。
「あ‥あの、某…」
「いいから、メシ食っちまえよ。」
紡ぎ掛けた言葉を遮られ、幸村は仕方なく用意された朝食に手を伸ばします。
パクパク‥
ゴクンッ…
「お‥美味しいで御座る‥」
心がポカポカするような暖かい味に、幸村は夢中で食べ続けるのでした。
「んぐッ…!? むぐぐ‥」
「何やってんだ。ほら、水飲めよ。」
詰め込み過ぎて喉につっかえてしまった幸村は、渡された水でゴクゴクと飲み込みました。
「か‥忝のう御座る。」
「いや‥けどゆっくり食べたって、メシは逃げていかねえぜ?」
「あ‥はい、それは分かっているので御座るが、美味しくてつい…」
「まあそうだろうな、この俺が作ったモンだからな。」
「え? そうなので御座るか?」
その意外な発言に、幸村は食べる手を止めました。
「想像出来ねえか? 俺が料理をするなんざ。」
「いえッ!そのような事は‥」
すぐさま否定する幸村に、政宗は「そうか」と優しく微笑みました。
「あ‥」
その透き通るような瞳に、幸村も自然と笑顔になるのでした。
「何か、妙なものに御座るな‥」
呟いた言葉に、政宗が無言で問えば幸村はポツリと話始めました。
「某はオオカミで貴殿はブタ‥ 相容れぬ存在でありながら、このような時を共に過ごすとは‥」
食べ終えたお皿を運びながら、幸村は続けます。