過去拍手集

□佐×幸 3月前半
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最近の旦那は何だか様子がおかしい…

いつもなら、うるさいほど声を張り上げ槍を振り回してるのに‥

なのにここ数日はああして縁側に座ってぼうっとしている時間が長い気がする。

それってやっぱりアイツのせいなの?




「旦那、だーんな何してんのさ?」

「ん? ……あぁ…」


見かねて声を掛けるが、返って来るのは気の抜けた返事だけ。


「心ここに在らず‥ 魂の抜け殻ってカンジだよ、今の旦那は。」

「そうかもしれぬ‥」


ちょっと嫌味を効かせても、否定すらしない。そんな幸村の態度に佐助は顔をしかめる。



「そんなに、あの竜が気になるの?」

「え…?」


佐助の言葉に、幸村は目を見開く。


「独眼竜、伊達政宗‥ アイツと刃を交えてから、ずっとそんな調子じゃない? そんなに惚れ込んじゃったワケ?」

「惚れッ‥!? そうではない、ただ体の内側から焔に焼かれるようなのだ…胸が熱く、心が‥震える…」


幸村はギュッと拳を握ってみせる。


(あらら、しっかり火着いちゃってんじゃん。)


まるで恋しい人を想うような言葉に、佐助は苦笑いを浮かべる。


「それで稽古も手に付かないって? 虎の若子、紅蓮の鬼の名が泣くよ?」

幸村の前に屈み、下から顔を覗き込んだ。


「某とて分かっている。だが、何も手につかぬのだ‥ 何をしても気が入らぬ。」


佐助から目を逸らし、幸村は困惑した表情を浮かべる。
すると佐助はスッと立ち上がり、幸村に背を向けた。


「佐助?」


雰囲気の変わった佐助にどうしたのだ?と問えば、いつもより低い声で返事が返ってきた。


「旦那のその蟠(わだかま)り、俺様が跡形もなく取ってあげるよ。」
  
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