過去拍手集

□親×幸 1月前半
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「すごいで御座るッ! 元親殿! 海も空も真っ青で御座るよッ!!」


目を輝かせ、童子のようにはしゃぐ幸村に元親は笑みを浮かべる。


「綺麗なモンだろ? 陸に比べたら見える景色は変わらねえかもしれないが、波にしたって一つとして同じ形はねぇんだ。」

「そうで御座るな!」


船の欄干から身を乗り出し、幸村は体いっぱいに潮風を受けていた。



そう、幸村が今いるのは元親の船の上。海に出た事が無いと元親に話したら、「なら俺が連れて行ってやる」と言われ今に至るのだ。


「海はいいもんだろ? 船さえあれば何処へでも行ける…自由な世界だ。」


幸村の横に立つ元親の瞳には、水平線の遥か先の世界が見えているようだった。

その先に、何があるかは分からない…
未知の世界に人は不安や恐怖を抱くものだが、元親の心にそんなものは無かった。
ただ純粋に世界を知りたいという探究心、好奇心が元親を動かすのだ。

そんな元親の生き方に、少なからず幸村は惹かれていた。


「元親殿は、この広い海のような御方ですな!」


「俺が…海?」


何の前触れも無く言われた言葉に、元親は目を丸くさせる。


「はい! どこまでも広く深いこの海は、元親殿のお心と同じに御座る。」

海を眺め、言い切る幸村に元親は隻眼を細めた。


「そりゃ買いかぶり過ぎだ…

だが、最高の誉め言葉だな。有り難く受け取るぜ。」


元親はニカッと笑い、幸村の頭をポンポンと叩いた。


「幸村は…そうだな、俺には星のようだな。」


「星…で御座るか?」


虎や焔に例えられる事はあったが、星と言われたのは初めてだ。


「元親殿、何故某が…」


「兄貴! 兄貴―ッ!!」


元親を呼ぶ部下の声に、幸村はその先の言葉を飲み込んだ。


「何だ慌てて? 賊でも出たのか?」

「いえ、出るには出たんですがね…」


部下ははっきり言わないが、元親にはしっかり伝わったようで口元をニヤリと釣り上げた。


「そうか出やがったか…よし野郎共! 最高の食材を捕まえるぜ! 準備はいいかッ!!」

「「オオッ!!」」


元親の掛け声に、男達は拳を掲げやる気満々だ。

甲板は一気に活気づき、バタバタと慌ただしくなる。

ただ一人、幸村には何が起きたか分からず辺りをキョロキョロと見回している。
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