過去拍手集

□就×幸 12月後半
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初めて…その姿を目にしたのはいつだったであろうか…



鮮烈な紅
戦場に咲く焔



我の行く手を阻む存在



…真田幸村……



特定の人間に興味を抱く事など無かった。敵の…大将ならまだしも、一介の武将など…

けれど、その存在は確かに我の中にある。あの者が纏う焔に体の内側からジリジリ灼かれているようだ… 痛みとも痺れとも分からないこの感覚… それを何と呼ぶのか我は知らない。



『それはさあ“恋”っていうんだぜ。』



以前、ふらっと現れた前田慶次はそんな言葉を残して行った。



…恋…だと? そんな曖昧な感情に我の心は乱されるのか…? そのような物、我には必要ない。




――――――――




数日後、武田と織田の開戦を聞き数人の従者を連れて馬を走らせた。

見下ろした戦場には、見紛うことなき紅蓮の炎。そしてそれを操る真田幸村の姿…

チリ‥と胸の奥が疼きだす。



「元就様!?」

「お待ち下さい!」



従者達の制止を振り切り、真っ直ぐ真田へと向かって行った。



「某は真田源二郎幸村!勇猛なる者はお相手致す!」



そう‥その焔だ。猛々しくも美しい、その焔が我の心を乱す。



「む!?」



強い覇気を放ち、真っ直ぐ向かって来る一騎に幸村は二槍を構える。



「ッ!? …貴殿は…」



驚きを隠せない幸村に、元就は容赦なく輪刀を振りかざす。



ガキンッ!!



互いの得物がぶつかり合い、火花を散らす。



「くぅッ… 待たれよッ! 毛利元就殿とお見受け致すが、何故貴殿がこちらにおいでかッ!!」

「…貴様の知った事ではない…」



冷たい視線を幸村へ向け元就は構わず攻撃を続ける。



「我が武田は織田との戦の最中で御座る! それを邪魔立てなさるおつもりか!」

「…………」

 
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