過去拍手集

□慶×幸 12月前半
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「お〜い、幸村は居るか〜い。」



上田城に響く呼び声。それは全国各地を飛び回り、風来坊の名を持つ前田慶次のものだった。フラッと現れたかと思えば、風のように去っていく自由気ままな慶次は、今回も突然現れた。



「幸ー! ゆーきー! あれ? 居ないのか? 幸ちゃーん!!」



何度かその名を呼べば、土煙を上げながら紅い小さな人影がこちらに向かってくる。



ドドドドドドッ!



「うおおおぉッ! けぇーいーじぃーどぉーのおぉぉッ!!」

「おっ、いたいた! 幸ちゃーん 会いたかっ…」



ドガッ

「がはぁッ!」



幸村を受け止めようと慶次は両腕を広げたが、そこに飛び込んできたのは強烈な蹴りだった。



「慶次殿! 某を『幸ちゃん』などと呼ばないで下され!」

「いたた‥ やあ、久し振り幸村。相変わらず容赦ないなぁ。」



蹴られた箇所をさすりながら慶次は、あははと笑う。



「慶次殿が悪いので御座る! 男子に向かって『〜ちゃん』などと、嬉しいはずないで御座ろう?」

「そーかなぁ。俺は親しみ感じて好きだよ? それに幸村はかわいい…」


「(槍を構えて)慶次殿… 次は某の槍に突かれてみまするか?」

「え、遠慮します…」



黒幸村の出現に、これ以上からかうのは止めようと慶次は思うのだった。



……………………◇◇




「美味しいで御座るなぁ!(モグモグ)」



幸村の機嫌を直す為、慶次は土産の甘味を取り出した。甘味に目がない幸村はすっかり餌付け?され、縁側にてそれらを頬張っている。



「こっちの大福も美味いで御座る!」



甘味に夢中な幸村に、慶次の顔も自然と綻んだ。



「戦場で槍を振るう姿より、そうして幸せそうに甘味を食べてる姿の方が、幸にはよく似合ってるよ…。」



ぼそりと慶次は呟いた。

 
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