過去拍手集

□佐×幸 11月前半
1ページ/4ページ


ザザッ

タッタンッ…








陽が傾き始め、空は茜色に染まりつつある。
そして木々の間を軽快に飛び回る影が一つ…

甲斐・武田軍が忍 猿飛佐助である。








(今回の仕事も完璧…流石は俺様…)








武田信玄の命により、各地を飛び回っていた佐助だが、仕事を終え信玄への報告も済み、今は己が主真田幸村のもとへと向かっていた。








(ここ最近大きな戦も無いしな〜 旦那ってば元気有り余ってそう…)








他愛もない事を考えていれば、主の城はもうすぐそこ…








「うおりゃぁぁぁぁっっ まだまだあぁっ!!」

(!!!?)








突然響き渡った大声に、佐助はバランスを崩した。どうにか落下は免れたものの、忍としてはちょっと情けない…








(あ、危なかった……それにしても今のは間違いなく旦那の声……まさか!)








もしや何者かの襲撃でも受けているのでは…最悪の事態を考え、佐助は気配を消し慎重に城へ向かった。




――――――――
―――













「はぁぁ〜。」








城の様子が見える所までくると、佐助は盛大なため息をついた。








「まぁ、そんな事だと思ったけど…ね。」








視線の先には幸村の姿。けれど倒すべき相手の姿は無く、一人二槍を振るいまくっている。








「はっはっ、どおりゃああぁぁっ!!」








鍛錬といえ、手を抜くなど幸村には有り得ない事だが、いつにも増して気合い充分だった。








「ははっ、こりゃ相当元気余らしてるな。真田の旦那…」








離れた木の上から暫し傍観。しかしそうしているうちに、槍は炎を纏い辺りの草木を焦がし始めた。








「あ〜あ、これじゃあ城が燃えちゃうじゃないの。」








我が主ながら、小言の一つでも言ってやろうと枝を蹴る足に力を入れた。
が…








「まだだっ、まだ足りぬっ! 政宗殿にはっまだっ… はああぁぁッ!」








政宗殿…その名を聞いて、佐助は力を抜いた。








「…まぁた、独眼竜かぁ…。」








佐助は嫌そうに呟いた。戦場で刃を交えてからというもの、常に幸村の心の中には政宗がいた。互いに好敵手と認め、会えば正面からぶつかり合う… 忍である佐助には理解できたものではないが、政宗の存在は目障りであったしその存在に執着する幸村にも多少の不満を抱いていた。








「ちょっと遊んじゃおっかな〜。」









悪戯っぽく笑い、佐助は印を結んだ。

 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ