過去拍手集
□三×幸 第1話
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「ふぅ‥」
ドサッと自ら山積みにした数冊の本に、幸村はため息をついた。
夏休みに出された課題を早々に片付けてしまおうと勇んで図書館へ来た幸村だったが、資料となる本の厚さにすでに意気消沈。
それでも一応‥と、パラパラページを捲ってみるのだが、びっしり並ぶ字の羅列に敗北寸前だった。
(やはり佐助や政宗殿と一緒の方が良かったか…)
弱気にもクラスメートの顔が浮かんだが、幸村はブンブン頭を振って彼らを意識から追い出す。
二人とも成績優秀ではあるのだが、共に勉強をしてまともに済んだ試しがないからだ。勉強会などとは名ばかりで、幸村はいつもからかわれてばかりだったのだ。
こうしていても仕方無いと自分に言い聞かせ、幸村は気が遠くなりそうなのを堪えながら資料に目を通し始めた。
………ー―
「う〜」
「むぅ。」
「はぁ…」
バタン…
(解せぬ…)
30分後、幸村は資料の前に見事に敗北していた。頭痛に耐え、何とか数ページ読み進んでみたもののその内容は難しい単語ばかりが並び理解出来たものではない…
(けれどこの課題は皆に出されているもの‥ 某だけが投げ出すわけにはいかない。)
幸村は一つ伸びをすると辞書を探しに立ち上がった。
………ー―
「これでは、いつ終わるか分からぬ…」
辞書を片手に持ち学習室という名の戦場に戻る幸村だが、その足取りは重い。
気分転換とばかりに館内を歩いていれば、幸村はよく知る姿を視界に捉えた。
(あれは… 三成殿‥)
そこにいたのは佐助や政宗と同じく、クラスメートの石田三成。けれど無口で、人を寄せ付けない彼とは話という話をした事は無かった。
(三成殿も、課題をしに?)
本を探す三成の様子を、幸村は柱の影から暫く見つめていた。
すると一冊の本を選び、三成は幸村のいる方とは反対方向に歩き出した。
(あっ…)
無意識にも、幸村は咄嗟にその姿を追い掛けていた。
三成は角を曲がり、幸村も同じく角を曲がるのだが…
「おら‥れぬ…?」