小説2

□新婚☆ですから2
(家×幸)
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朝には積み上がっていた仕事の書類も、今は綺麗に片付いている。




そう、残業なんてとんでもない!




ワシには、帰りを待つ可愛い奥さんが待っているのだからな。


今日も定時きっかり、さて…帰るとするか。








「お先に失礼します。」


「お疲れ〜」
「お疲れ様。」








残業組に声を掛け部屋を出る。
さあ、早く帰っ…








「徳川さん!」


「え?」








呼び止められ、足を止める。
振り返った先には、職場の女性…鶴姫がいた。






………――














(ハロウィンか…)








お菓子の包みを手に、ぼんやりそんな事を思う。








『徳川さん、余り物なんですけど良かったらどうぞ♪』


『これは…?』


『ハロウィン用のお菓子ですよ♪』








そう鶴姫から手渡されたのは、オレンジと黒で飾られた小さな包みで…








「ハロウィンなんて、ワシが子供の時には無かった風習だな。」








けれど気付けば、大型デパートも商店街もカボチャやお化けのディスプレイが目立つ。
フラワーショップには、なぜかカボチャが並んでいるくらいだ。


『ハロウィン』の本当の意味を、どのくらいの人が理解しているかは知らないが… まぁ、楽しければそれでいいんだろう。








「そういえば幸村は…」








お祭りの類いは大好きで、『祭り』と聞くだけで嬉しそうにはしゃぐんだ。

ハロウィンについては何も言っていなかったが、帰って『トリック or トリート!』何てワシが言ったら、幸村はどんな反応をするだろうか?








「…」








それを想像するだけで、何だか自然と顔がニヤけてしまう。





『それ、何かの呪文で御座るか?』
なんて首を傾げたり、
『お菓子より、ご飯が先で御座るよ!』
なんて言うのかもしれない。
どちらにせよ何にせよ、可愛過ぎて仕方ないんだよなぁ。





さあ、早く帰ろう。愛する我が妻のもとへ…







………――












角の道を曲がれば、家の明かりが見える。
その明るさに、心がどこかホッとする。

毎日当たり前に感じがちだが、誰かが帰りを待っていてくれるというのは贅沢で幸せな事だとワシは思う。








『家康殿!お帰りなさいで御座るッ!!』








玄関を開ければ、いつも飛び込んで来るとびきりの笑顔。
その陽の様な明るさに、疲れなど何処かに吹き飛んでしまうのだが…








「ただいま。」








今日は…静かだ。








「幸村?」








明かりは点いているし、靴もあるから家にはいるはず。
けれど返事がない。








「……」








トイレか風呂か、リビングで転た寝か…
とりあえず部屋へと上がった。








「幸村、いるんだろう?」








キッチンからは食欲を誘ういい匂いがする。
けれどそれを作ったであろう幸村の姿がない。








「幸村?」








部屋の景色は何一つ変わりないのに、その姿がないだけで酷く不安になってしまう。
具合が悪くて、まさか…横になっていたり…





まさかな… そう思いつつ、足早に寝室へと向かった。







ドアは少し空いていて、中からは布擦れの音。

ここに幸村が居るのは、確かなようだ。








「幸村、大丈夫か?どこか具合でも…」


「……」








薄暗い部屋に入り、中の様子を伺う。
明かりを点けようと、スイッチに手を伸ばした瞬間…

 
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