小説2

□SUNRISE
(親+就×幸)
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「では行ってくるぞ!」






勢い良く馬に跨り、意気揚々と走り出す。

けれど目指す先に胸躍らすも、見送る佐助の顔は最後まで晴れる事はなかった。







『旦那ぁ、本当に行くの?』


『ああ、勿論だ!』


『勿論だって‥ ねえ。』


『何だ佐助、何か心配でもあるのか?』


『そりゃ大有りだよ!あの毛利元就から茶会の誘いだなんて‥ 絶対裏がある!』


『そうか? 元就殿は礼儀正しい、よき御仁だぞ?』


『そりゃ旦那の前でだけだよ‥』







頭を抱え、盛大に溜め息をつく佐助‥
某にはよく分からないが、とにかく行かねばならぬ!
他ならぬ元就殿からのお誘い… それに書状には、『飽くほどの甘味を共に食し合いたい』という、極上の誘い文句が記されていたのだから。




………―――










「アニキ――ッ!!」


「何だ、どうした?」


「それが今、毛利から書状が届いて…」


「あぁ!? 毛利からだぁ?」







知りすぎる相手だけに、嫌な予感しかしねぇ。
奴さんは戦を仕掛けて来るような真似はしねえが、向こうから動くときは大抵悪い事ばかり…


かといって、破り捨てる事もできねぇ(祟られそうでυ)


仕方なく、届いた書状に目を通す。





すると、そこには思いもよらない名前が記されていた。







「幸村… だと?」







毛利の思惑は分からない。けれどそこに記されている名は、俺を動かすには十分だった。





………―――










「お―い毛利! 来てやったぞ!!」







書状の内容は、幸村を交えての茶会の誘い。

毛利からの誘いなんざ今までに受けた事がなく、絶対怪しいと思いながらも、俺は船を飛ばし安芸へと来てしまった。







「人を呼び出しておいて出迎えも無し… こりゃマズったか?」







しんと静まる城内。毛利どころか人の気配すらない。
これが陽動だとしたら、俺はまんまとはまっちまったわけだが…





微かに聞こえた話し声に、足を奥へと進ませた。




………――










「元就殿、この大福はまこと美味で御座る!」


「そうか… ではこちらの羊羹はどうだ?」


「頂きまする!」







辿り着いた奥の部屋。襖一枚隔てた所で足は止まる。

童子のような元気で明るい声… これは確かに幸村のものだ。







(まさか本当に毛利を訪ねて来てるなんてな…)







その事に驚きつつも、更に驚愕すべきは毛利の態度だ。






(自分の兵士にも恐れられる奴が、なんて穏やかな口調していやがる…)






瀬戸海を挟み、毛利とは長い付き合いになる。
だがこんな奴さんは初めてだ。

 
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