企画小説
□8月9日(ハグの日)
(小十幸←政)
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「え? ま…政宗殿、今何と申されたので御座るか?」
「いや…だからよ、最近小十郎が元気ねえから、何か知らねえかって。」
「片倉殿が…」
昨日お会いした時は、特に変わった様子ではなかった。
…いや、某が気付かなかっただけで本当は…
「おいおい、アンタまでそんな顔すんなよ。根を詰めすぎて、少しばかり疲れが溜まってるだけだろうからな。」
「ですが…」
「気になるなら会いに行きゃあいい。そうだろ?」
「う…」
会いたい。
今すぐにでも、片倉殿のもとへ飛んで行きたい。
だが…
「お忙しい所をお邪魔しては、片倉殿に余計な気を使わせてしまうだけに御座います。今は…「分かってねぇな、幸村。」
「政宗殿?」
「分かってねえよ、全然な。」
やれやれと溜め息をつく政宗殿。分かっていないとは、やはり片倉殿の事か。
「政宗殿と片倉殿は、幼き頃よりずっと一緒だったので御座ろう? どんなに頑張ろうとも、今の某では政宗殿の様に片倉殿を理解する事は…」
「そうじゃねえ。」
「ならば…」
「好きなヤツがそばにいて、迷惑だと思うか?」
「え…?」
「邪魔だと…そう思うか?」
「それは…」
「逆に考えてみろよ。小十郎が訪ねて来て、アンタは迷惑だと思うのか?」
「そ…その様な事ッ!むしろ嬉しく、心が温かく…」
くすッ…
「Σあ…////」
「まあ、そういう事だろ。それにそうじゃなきゃ、アイツにアンタを…」
「?」
「…何でもねえよ。」
何で御座ろう。
今一瞬、政宗殿の表情が酷く寂しげだった様な…
「オラ! ボサッとしてね―でさっさと行けよ。んで尻の一つでも揉まれてこい。」
「し…ッ!? は…破廉恥で御座るぞ政宗殿!!」
「破廉恥上等!男はそれで元気になるんだぜ?」
「政宗殿だけに御座るッ!!」
片倉殿はその様な…
その様な…
『声を抑えるんじゃねえ。聞かせろよ、俺だけに…』
『俺の熱を覚えたか? 覚えるまで、何度も何度も…』
ボンッ!/////
「おい、顔真っ赤だぜ?一体ナニ考えてたんだ?」
「な…ななななななな何でも御座らぬッ!で…ででは某は、これにてッ!!」
「ああ、…ってちょっと待ちな。いい事を一つ教えてやる。」
「いい…事?」
………――
片倉殿の書斎をそっと覗き込めば、尋常ではない書類が山の様に積まれていて、その中でただ黙々と手を動かす片倉殿がいた。
昨日はお忙しいなどと、一言も仰ってはいなかったのに…