企画小説
□♂も♀も関係ないないッ!
(関ヶ原×幸+孫)
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こんな場面を、もう何度やり過ごしただろうか?
御館様より甲斐を託され、大将となった某には成さねばならぬ事が山ほどある。
ただでさえ、女という身で引け目を感じているというのに…
国を、民を支えていかねばならぬというのに…
それなのに…
「どうした真田、顔色が悪いぞ?」
「フン… 馬鹿か貴様は。その醜い顔に、真田は気分を悪くしたのだ。」
某の前には、対照的な二人の御仁。
東を束ねる徳川家康殿と、西の凶王…石田三成殿だ。
東と西の対決…
天下分け目の大戦は、もういつ始まっても可笑しくない状況にまで来ている。
しかしその中で、両軍の総大将殿は揃って某の前におられるのだ。
昨日も一昨日も…そしてその前の日も。
「言い争うだけならば、余所(よそ)でやって下さらぬか。敵対する御二人が武田領で密会など、迷惑なだけに御座る。」
国を民を重んじ、武田はこの東西の戦いに参戦しないと決めた。
しかしこれではッ…
「ほら三成、真田が困っているじゃないか。大阪に帰ったらどうだ?」
「何を言う、困らせているのは貴様だろう?その存在自体が罪なのだと、なぜ気付かぬのか…」
見えぬ火花を散らし、低俗な言い争いが今日も始まる。
その行く末を黙って見ていたが、そろそろこちらも我慢の限界だ。
「いい加減にして下されッ!争われるならば、ここではないどこかで勝手になさるがよかろう!!」
ダァンッ!と足を踏み出し、怒りの形相で御二人を睨み付ける。
けれど御二人には、全く効果がないようだ。
「どうした真田?急に大声を出して…」
「もしや…アノ日か?」
「ああ!真田は重いほうなのか!」
そうかそうかと勝手に納得し、うんうんと頷く御二人に、いよいよ殺意が湧いてきた。
出来る事ならば今この場にて討ち取り、天下を武田のものに… という思いは胸にある。
だがどんなにふざけた言動をしていようと、東西の総大将という地位は決して飾りではない。
本気で対峙すれば、この幸村など…
ギュウゥッ…
違う。
女である事を言い訳に逃げたくはない。
何より、武田を託して下さった御館様に申し訳ないではないかッ!
「真田、体調が優れぬのなら休んだ方がいいんじゃないか?」
「貴様がいては休むに休めん。消えろ家康…去れ!散れッ!!」
「いやぁ、休まらぬというならば、原因は三成にこそあるじゃないか。三白眼でいつもいつも睨まれては、真田は落ち着かないぞ。なあ?」
「黙れ家康ッ!貴様こそヘラヘラと締まりのない顔を晒し、軟弱な言葉を並べ立てるばかりではないかァッ!!」
ぎゃいぎゃいと、某を取り残し御二人の熱は益々上がって行く。
互いを『敵』と認識し、滾るその様子に複雑な気持ちになってしまう。
女であるから…
女であるがために、某はッ…
そんなのは、嫌に御座るッ!
ボウゥッ!!
「わわッ!? 真田、どうしたんだ!」
「家康はともかく、なぜ私に槍を向けるッ?」
「問答…無用ッ!!」
御二人の言葉を無視し、槍を握る手に力を込める。
不意をついてなお、掠りもしない切っ先に力の差を感じずにはいられない。
「お…落ち着け真田!とにかく槍を離そうじゃないか。」
「そうだ、家康を心底嫌うならば私が斬滅すると約束する!だから今は…」
「いやいやいや!三成、それは違うだろう?」
「何が違うものかッ!私はだな…「烈火アァァァァァァッ!!」
ドガガガッ!!!!
「「ぐわあぁぁぁぁッ!?」」