企画小説
□I want‥ 2
(佐×幸←親)
1ページ/12ページ
「忍の兄さ―ん。酒はまだかぁ?」
「はいはい!只今お持ちしますよっと。」
ったく、俺様は給仕じゃないってのに。
でもまあ‥
仕方がない‥ か。
『長曾我部軍がウチに加勢!? 本当なの大将?』
『ああ、本当だ。』
『本当だ‥ っておかしいでしょ!? 同盟国でもないのに、わざわざ四国からお越しになったワケ?加勢の為に?』
『それは‥だな、長曾我部殿は船で日の本を回られていたそうなのだが、高波に食料やらを流されてしまったらしく‥』
『まさか、物資の補充と引き換えに助力するっての? 有り得ないでしょ!?こんな見計らったみたいに‥ しかも別働隊まで‥
到底、俺様は信用出来ないよ。』
『佐助‥ ならどうしろというのだ。』
『大将‥?』
『俺の未熟さが、不甲斐なさが、今を招いた全ての原因と分かっている。
だがその上で俺は判断し、決断した。長曾我部殿の申し入れを受けると。』
『うん‥』
『俺はただ守りたいんだ。甲斐を‥ 皆を‥
その為なら‥』
あまりにも不自然な長曾我部軍の出現。
疑問を抱く将も少なくはなかったけれど、迷ってる時間は無くて‥
最後は大将の決断に皆納得していた。
長曾我部の別働隊に背後を突かれた宇都宮と姉小路の陣形は簡単に崩れ、そこを一気に騎馬で攻め込めば早々に勝負はついた。
自軍にほとんど被害はなく、完勝と言える戦だ。
窮地からのこの逆転に皆からは喜びの声があがり、一時的にも協力関係となった長曾我部軍と肩を抱き喜びを分かつ。
(変わった軍もあるもんだ‥)
いくら物資の為とはいえ、わざわざ命を危険に晒すなんて。
でもそのお陰で武田が勝利したのは事実‥ か。
「佐助!」
「あ、大将‥ ごめんすぐに次の酒を‥」
「そうではない。すまぬ、お前にまでこのような遣いを‥」
「へ!? ああ、別に気にする事ないよ。人手が足りないからって、恩義ある相手を無下には出来ないでしょ。」
「恩‥義か‥」
「これくらい俺様にはなんて事ないから、大将は長曾我部のお偉方の相手でもしててよ。」
「あ‥ ああ、そうだな。」