企画小説

□I want‥
(佐×幸←親)
1ページ/5ページ


アイツを初めて見た時から感じていたもの。


この胸を焼く、小さな『焔』





日ごと熱く、勢いを増すそれは、俺の内に眠る本能を呼び起こす。







そうだ‥

目覚めさせたのはお前だ。
だからお前が悪いんだぜ?

なあ、幸村…





―――………










「アニキ―――ッ!!船の準備は出来やしたぜ!」



活気づく甲板に、野郎どもの声が響く。

船首に立ち、眼前に広がる海原を見つめれば胸の鼓動が早まるのが分かる。




この海は、お前に続いているのだと‥







「さぁて、そろそろ行くとするか。」


「アニキ!アニキ!!」


「行くぜ野郎どもッ!海賊、長曾我部元親の荒波にしっかりと付いて来いよぉッ!!」


「おお―――ッ!!」






風を受け、波に乗る。

そうすれば、走り出した船はもう止まらない。




俺の‥
この欲望と同じく。






………―――











お館様が病に伏せられて以来、周辺国の圧力がこの甲斐にのしかかる。

宇都宮や姉小路‥ 大きな戦にはならないものの、幾多の小競り合いは確実に兵力を消耗させる。




(この幸村が‥ もっとしっかりせねば…)




お館様不在であろうと、この甲斐は強固であると力を誇示せねばならぬのに、この幸村では役不足。

悔しい‥ 力無き、己自身が。






「大将!」


「佐助か、どうした?」

「うん‥ 気も休まらない大将に、追い討ち掛けるようだけど‥」




「構わぬ、はっきり申せ!」





佐助の様子を見れば、凶報である事は間違いない。
某を気遣う想いに感謝はすれど、お館様が伏せられている事以上の凶報は‥ この幸村には無いのだ。





「東と西、宇都宮と姉小路に挙兵の動きあり。」

「そうか。その兵力は?」


「今までとはワケが違う。両軍とも、全力でこの甲斐に攻め入るつもりだ。」


「そうか‥」






両軍が同盟しているとは考えにくい。
兵力を割り、先手を突いて各々撃破するか‥

だが、どちらかでも突破されれば甲斐の地は戦場となり、甚大な被害は免れぬ。
ならば両軍をギリギリまで引き寄せ‥

いや、それではいらぬ共闘を誘発する恐れも‥





「‥い将。」





どうすれば‥ 一番‥
考えねば‥ 俺が‥

 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ