企画小説
□Wish
(政×幸)
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何度も‥
生まれきた意味を探した。
そしてその度に、辿り着かない答えを恨んだ。
右目を失くし、この醜い姿で生きている価値はあるのかと‥
『うおおおぉぉぉッ‥!!』
だが‥
『勇んで参られよッ!某はッ…!!』
俺は出逢った。
猛炎を纏い、戦場を乱れ舞う―――
真田幸村に‥
…………――
「小十郎、これからちぃとばかり城を空けるぜ?」
「また、『真田幸村』ですか?」
優秀な俺の側近は、眉間にシワを寄せ呆れた様に息を吐く。その様子に、クッと口角を上げた。
「分かってるじゃねえか小十郎、さすがだな。」
「お褒めに与り… と、申し上げたいところではありますが、止めておきましょう。」
「An?素直じゃねえな。」
「恐れながら、政宗様のお言葉をすべて鵜呑みにしていては、この奥州の安寧に関わります。」
「鵜呑み… ねえ。俺はそんなに頼りないか?」
「そうでは御座いません。ですが真田の事となると、些か…」
そうだ。
アイツの事となると、他の全てがどうでもよく思えてくる。
この奥州も‥ 天下すら…
「決して死んではならぬその御身。少しでも御理解頂けるのならば‥「理解はしてるさ。溜まってた政務もきっちり片付けたぜ?」
「政宗様!私が言いたいのはそのような事ではッ‥!!」
「そうカリカリすんな。眉間のシワが増えるだけだぞ?」
「政宗様ッ!!」
シワどころか、軽く青筋を浮かべ始めた小十郎の肩をポンと叩き横を通り過ぎる。
小十郎はまだ何か言いたげな顔をしていたが、俺は振り返らず部屋を出た。
小十郎の言う事は分かる。
自分の立場がどんなモンか‥
どれだけのモノを背負っているか‥
この命が俺だけのものでないなど、言われずとも嫌と言うほど知っている。
だから‥
だからこそだ。
アイツと戦う瞬間は、何も考えず純粋に『俺』として向き合える。
伊達家当主のイレモノでしかなかったこの体と魂は、アイツに出逢った事で一つになった。
生かされている道じゃなく、俺は自分の意志でこの道を生き、進んでいる。
幸村‥
アンタに向かってな。