企画小説

□泡沫の夢
(三×幸)
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『秀吉‥様… 秀吉様ァッ‥』




届かない…

どんなにその名を呼ぼうとも、私の声はあの方に…


届かない…

どれだけこの手を伸ばしても、あの偉大な存在には‥もう二度と…





秀吉様…






私から、唯一絶対の存在を奪ったのは

誰だ‥?






『三成、秀吉公の戦は、多くの血が流れ過ぎる‥』



家‥康…




『これではダメなんだ、三成‥』




家康ッ‥




『三成‥』




家康―――ッ!!




許しはしない!私は‥
忘れはしない!貴様の罪を‥


必ず、必ずこの‥








「‥殿‥三成殿!」


「!!」




夢から醒める。
私を呼ぶ、けたたましいほどの声に。

急速に意識が浮上する。私の意志を無視して。




「三成殿!三成殿!!」


「‥騒ぐな、聞こえている。」




瞼を開きそう言葉に出せば、目の前の存在は安堵の表情を浮かべ顔を近付けてきた。




「心配致しました。酷く、うなされておられ‥「貴様は、何度同じ事を聞けば理解するのだ?」




言葉を遮るよう鋭い視線を向ける。
隠すつもりなどない殺気を纏えば、大抵の者は私に恐れを抱き去って行く。
だがこの男は‥
真田幸村には、私のそれは通用しない。

それを理解しながら、同じ行動をしてしまう私こそ学習能力が皆無‥

いや、分からないのだ。この男への対処の仕方が‥




「すみませぬ三成殿。ですが苦しげな貴殿の声を聞いては、放っておけず‥」


「余計な世話だ。苦しげなどと、貴様の思い込みに過ぎん。」


「ですがッ‥」


「黙れッ!私は夢にうなされてなどいない!!あれは秀吉様をお守り出来なかったこの無力、そして家康への尽きぬ恨みが表れたものだ。決して‥忘れぬようにッ‥」




そうだ‥
家康をこの手で討ち、秀吉様に許しを乞うその日まで、私は‥





「三成殿‥ 逸るお気持ちは分かりますが、体を壊されては元も子も在りませぬ。食事も満足になさらないと、皆も心配して‥「貴様に私の何が分かる?この体も、この心も、もう壊れているというのに。」


「三成殿‥」

 
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