企画小説
□sweet home2
(三×幸)
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「幸村、私に何か隠し事をしてはいないか?」
「三兄に? いえ、何も無いで御座るよ。」
「そうか、それならばいい。」
夕食時の三兄のそんな一言。冷静さを装いながらも、某の心内は焦りに焦りまくっていた。
三兄には嘘も秘密も通用しない。だから三兄に隠し事もしてはいないんだけれど‥ けど、ちゃんと説明していない事はある。
言えない事が、一つだけ‥
勘のいい三兄に知られるのは時間の問題かもしれぬ。でも、それでも自分からなんて到底言えるはずもなかった。
………――
放課後だというのに、ここ数日どのクラスも活気に満ちている。それというのも数日後の文化祭のため、皆準備に追われているからなのだが…
某も、何か手伝わなければ‥ そう思うのに、まったくもってやる気が出ない。
それもこれも、みな‥
「幸村!」
「ちょっとこっち来いよ。」
やたら愉しげな笑みを浮かべ某を呼ぶクラスメートの政宗殿に元親殿。
そう、このお二人のせいで文化祭に意欲的になれずにいるのだ。
「何で御座るか?」
嫌な予感を抱きながらも二人に歩み寄って行く。すると政宗殿は誇らしげに紙袋を某に押し付けた。
「これは‥」
「お前のcostumeだ。」
「コス…」
その言葉に、一気に脱力してしまう。二人は「最高傑作だ!」とか「フリルの量も配色も完璧!」と互いに賛辞し合っておられるが、某にとっては迷惑な話でしかない。
紙袋をチラリと覗けば見えた黒地の布に真っ白なフリル‥ 気が遠くなりそうで御座る。
「おい幸村、どこ行く気だ?」
「試着しろ、試着。」
紙袋をそっと置いて立ち去ろうと思ったのに、見つかってしまい両手を掴まれてしまった。
「政宗殿、元親殿、やはり某このような格好は嫌に御座る。」
「何でだよ?俺らの汗と涙の結晶を無駄にするのか?」
「そ‥そういうつもりでは御座らぬが、こういうのはおなごが着たほうが‥」
なんとか言い逃れようとする某に、元親殿は長身を屈(かが)めてじっとこちらを見つめて来た。
「なあ幸村、このクラスの出し物は何だ?」
「喫茶店で御座る。」
「で、お前の役割は?」