小説

□悪戯
(蘭×幸)
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(やった! これで幸村と…)







小さな包みを握りしめ、足取り軽く蘭丸は幸村のもとへと向かっていた。



信長を失い、身寄りの無い蘭丸は武田軍にその身を置いている。自分の道を見つけるため… というが、実際のところは幸村の傍に居たいというのが本心だった。





タタタッ





(あっ、いたいた♪)

「おーい幸村ぁ!」







屋敷の庭で槍を振るう幸村を見つけ、蘭丸は駆け寄って行く。







「蘭丸殿! 今日も元気そうで御座いますな!」







惜しみない笑顔を向けられ、蘭丸の心臓はすでに爆発しそうだ。







「も、もちろんだよ幸村!(こんな近くに幸村がいるんだからね)」







蘭丸も全力の笑顔で返す。







「幸村は、今稽古中だった?」


「はい。某の力などまだまだ未熟なもの… 日々精進せねば!」







グッと拳を握る幸村の姿も、蘭丸にはかわいいものにしか映ってはいなかった。そしてこういう時にこそ、自分が子供であるという事を最大に活用できると蘭丸は心得ている。







「…ごめん‥幸村」


「な、何がで御座るか!?」







突然しょんぼりしてしまった蘭丸に、幸村はただただ狼狽するばかり…







「蘭丸…邪魔だったでしょう?」







まるで、叱られるのを待つ子供のように蘭丸はその身を小さくさせた。きっと大半の大人には通用しないであろうが、相手は幸村だ。純真無垢な幸村なのだ。







「邪魔などと…某は蘭丸殿の事、そんなふうには思っていないで御座るよ。」







蘭丸の心中を察し、幸村の顔が歪む。


(ほら、幸村はいつだって蘭丸に優しく接してくれる)


こんなにも真っ直ぐで真っ白な幸村を騙すような事に蘭丸はチクッと心を痛めるが、年下というハンデを埋めるにはそうも言ってはいられなかった。特に、あの『竜』には負けたくなかった。







「蘭丸殿、ちょうどお茶にしようと某思っていたので御座る。ですが独りでは寂しいと… 蘭丸殿お付き合い下さいますか?」







そんな願ってもない申し出、受ける理由は多々あれど、断る理由など蘭丸にありはしなかった。







「もちろん! 喜んで! 幸村とだったらどこまででも付き合うよ!」







心底喜ぶ蘭丸だったが、気になる事もあった。







「そう言えば、いつものあの忍はどうしたの?」


「佐助で御座るか? 佐助はお館様の命にて、西国へ行ってるので御座るよ。」


「…そうなんだ。」

(忍びは居ない…か よしッ)

 
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