小説

□パラレル★トラベル
〜BASARA世界編U〜
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(…あ‥れ? 何だろ? 体が揺れてる…?)

ぼうっとした意識の中、ユラユラと揺れる感覚に幸村の目は覚めようとしていた。

(起きなければ…)

しかしそうは思っても、瞼を開ける事すら今の幸村には億劫だった。

(あたたかいな…)

すぐ近くにある温もりが心地良くて、幸村はスッと体を摺り寄せる。



「ん? 起きたのか?」



もそもそと動く気配に、マサムネは声を掛ける。

(‥うん‥? 声‥?)



「An? まだ寝ぼけてんのか…」



童子のような仕草に、マサムネはクスリと笑う。

(マサ‥ムネ? マサムネの声‥)

スッと瞼を開けば、すぐそこにマサムネの顔があった。



「よぉ。」

「!」



思いのほか近い距離に、幸村はマサムネからパッと離れた。



「馬鹿ッ! 急に暴れるな!」

「え…」



フワッとする感覚に、体が宙に投げ出されそうなのだと気付く。

―そう、ここはマサムネの駆る馬上だったのだ。


「わ‥あ…」



バランスを崩した幸村の体は、マサムネの腕によって引き戻される。



「おいおい、寝ぼけて馬から落ちたなんざ笑い話にもならないぜ?」



走る速度を落としながら、苦笑い気味にマサムネは言った。



「ご‥ごめん。ありが‥と‥」



いや‥と視線だけ合わせると、マサムネは前を向き馬の腹を蹴った。

(俺は、寝てしまってたのだな…)

マサムネと話ていた時から、今までの記憶が無いことを幸村はそう納得した。

幸村はマサムネの前で横向きに乗っていた。この態勢は如何なものかと思いもしたが、馬に乗ったことも無い自分が言うのもな…と黙っていた。
少し下からマサムネの顔を見れば、今更ながらその端麗さにジッと見入ってしまう。

(政宗と同じ顔なのに、雰囲気は全く違うな…)

立場の違いか、歳の違いか… 幸村はそんな事を考えていた。



「An? どうかしたか?」



突き刺さる視線を感じ、マサムネは口を開いた。



「あ‥その、何処へ向かってるのかと…」



誤魔化すように、口から出たのはそんな言葉だった。けれど、その事も気になっていたことには違いない。



「屋敷だ… 俺の屋敷に向かってる。」

「マサムネの? じゃあここはやっぱり蒼北なのか。」

「Yes。お前が『道』から落ちたのは、蒼北と紅東の国境に近い所だった。幸か不幸か蒼北の地に着いたから、お前の気配はすぐに感じた。」

 
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