小説
□パラレル★トラベル
〜BASARA世界編〜
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誰かが…俺を呼ぶ声がする。
「…んな。 ねえ、伊達の旦那ってば?」
ペチペチと頬を叩かれ、ハッと我に返った。
「おま… 猿飛?」
「そーだよ。分かる? さっきからずっと呼んでんのにさぁ、ボーっとしちゃってどうしたの?」
(そうだ…俺は何して)
「旦那?」
政宗の深刻な表情が気になりながらも、佐助はボスッと政宗に鞄を渡した。
「ったく、俺様に荷物取りに行かせておいて何やってんのさ? 大将の…道場に行くんでしょ?」
政宗は鞄を受け取りながら佐助の言葉を頭で繰り返す。
(道場… そうだった俺はそこに向かってた。だけどここで…)
ズキンズキン‥
思いだそうとすると頭が痛くなり、政宗はたまらずその場にしゃがみ込む。
「ちょっ‥ちょっと旦那大丈夫!? 具合悪‥い…のね……え…」
心配そうにする佐助の声が遠くに聞こえる。代わりに違う声が政宗には聞こえた。
『‥むね……政宗!』
「!」
自分を呼ぶ声に政宗は目を見開いた。それは幸村の声。さっきまで目の前に居たというのに、幸村の存在を忘れていた感覚… その事実に驚きながらも、政宗は自身と幸村に起こった事を思い出し慌てふためいた。
「ゆ‥き村… そうだ、幸村ぁ!!」
「わああぁぁッ!?」
突然政宗が叫びだし、佐助は驚いた。だが政宗はそんな佐助に構わず、その両肩を掴むと叫び続けた。
「猿飛! 幸村が‥幸村が消えちまったんだ! 俺と同じ顔した奴がいきなり現れて幸村を連れて行きやがった!! 紅い光が強く光ってッ…」
「えッ!? ちょっと何? 同じ顔? と、とにかく落ち着いてよ!」
「落ち着いてなんかいられるか! 幸村が‥俺の目の前で消えちまったんだぞ!!」
政宗の慌てようにただ事ではないよと佐助は思ったが、いまいち話が見えてこない。
「分かった! 分かったからもっと落ち着いて話してよ。 で、その『幸村』って人は旦那の友達? 知り合いか何か?」
「なッ!?」
(猿飛は今何て言った? 幸村が‥何だって?)
政宗は動揺を露わにした。
「旦那?」
覗き込む佐助の胸ぐらを掴み、政宗は言った。
「猿飛! 何ふざけた事言っていやがる!! 幸村は俺達の幼なじみだろうが!」
だが、佐助の表情は変わらず疑問の色を宿したまま…
「幼なじみは俺と旦那だけでしょ? 『幸村』なんて俺は知らない… 分からないよ。」