小説
□パラレル★トラベル
〜Gate keeper編〜
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(ああ、クソッ!!)
苛立ちを隠しもせず、政宗は落ちていた空き缶を蹴り上げた。
カランッ!とキレの良い音が響いたが、政宗の心が晴れる事はない。
幸村の、BASARA世界に対する思い入れ‥ そしてマサムネ、ユキムラとの突然の再会…
政宗にとって、それらは素直に受け入られるものではなかった。
(痛てえ…)
幸村に殴られた箇所をさすりながら、政宗は公園のベンチに座る。空を見上げれば、太陽の眩しさに目を細めた。
「結局、一番餓鬼なのは俺じゃねえか…」
クッと自嘲し、口元が歪む。
幸村とユキムラの繋がりは、きっと言葉で表せられるものじゃない‥ 数日といえど、二人のそばにいた政宗は分かっていた。そう、分かってはいたのだが…
「抑えられねえモンは、仕方ねえだろうが‥」
それはユキムラに対する小さな嫉妬心。幸村の視線を、意識を独占する者への醜い感情。
自分の世界へ戻って来た事で幾分和らいでいたその想いも、再会を喜ぶ二人の姿に黒いモノが自身を支配し始めていた。
「別に、ユキムラが悪いワケじゃねえ‥」
確かに嫉妬心はあるものの、憎しみを抱いているわけでも嫌いというわけでもない。どちらかと言うと、いつも隣に立つマサムネにその感情は向いていた。
「何でも見透かしてるような目ぇしやがって‥」
自分と同じ名と顔を持つマサムネ。 違うのは年齢くらいか…
「いや、違うな全然。」
アイツは国主で、人々の上に立つ存在。強い意志と力を持ち自然と人を引き寄せる。きっとユキムラもそんなマサムネに惚れたのだろう。
政宗は己の手をジッと見つめた。
(俺にも力があれば、幸村は俺を見てくれるのか? 力があれば…)
「力無く、何かを欲するのは罪な事‥」
「!?」
背後から聞こえた声に、政宗はバッと後ろを振り返る。
「ですがあなたは、すでに力を手にしている。そう、誰よりも強い力を…」
そこには、妖しい空気を纏う長い銀髪の男が立っていた。