企画小説

□I want‥ 2
(佐×幸←親)
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「じゃ、行くよ」そう前を通り過ぎ賑やかな広間の中へ入れば、大将の表情を伺い知る事は出来なかった。
誰にも話す事の出来ない思いを抱え、まさか縋るようにこの背を見つめていたなんて。










「よぉ幸村、こんな所にいたのか?」


「ちょっ長曾‥「だから、違うだろ?」





背後から覆い被さるように現れた彼は、クス‥と楽しげに口を歪ませる。
その姿に恐怖を感じ、知らず体を引いていた。







「元親‥殿‥」


「そうだ、それでいい。それよりこんな所で何してる? 折角の祝いの席、大将のアンタがいなけりゃ意味ねえだろ?」


「そ‥某など何も‥ 此度の戦は、全て元親殿の‥」


「それはそれだ。武田の‥ 幸村の味方になると、そういう『取引』をしたんだからな。」


「も‥」


「あの時の言葉、忘れちゃいねえよな?」


「‥ッ」








元親殿の手が首筋に触れる。
深海の水のように冷たい指先は、某の体温を奪い去り動きを封じてしまう‥







「もう少し、しっかり付けとくか‥」


「ッあ‥」


「俺のモンだという、痕をな。」







ちゅ‥







ピリリとした痛みが首筋に走る。

あの時と、同じように‥








『某の‥ 全てを望まれるとは‥?』


『そのまんまだ。アンタが欲しい。』


『し‥しかし、この幸村の忠義はお館様ただ一人のもの。我が槍も、武田と甲斐の為のみに振るうもの。たとえ貴軍の質となろうとも、貴殿の思うようには‥』


『そうだな、その紅蓮の力は魅力的だが‥ 俺が望むアンタの全てはそういう事じゃねえ。』


『? ならば‥』


『抱きたいんだよ。思うまま貪って、欲望のままその身を味わいてぇ。』


『抱き‥!? 何を貴殿はッ‥ 某は男子に御座るぞ!!』


『んなこた百も承知。だがそんな事どーでもいいぐらい、アンタが欲しくて欲しくてたまらねぇんだ。』


『そん‥』


『さあ、どうするんだ? 真田幸村‥』









差し出されたその手‥
それを取る事がどういう意味か、俺には分かっていた。

そう、分かっていて‥
俺は‥








「どうした? やけに大人しいな。」


「!」

 
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