小説

□candy kiss
(慶×幸)
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「すみませぬ慶次殿、某ッ‥」


「ねえ幸村、花火ならマンションからでも見えるしもう帰ろうか?」


「! 慶次殿、某なら大丈夫に御座る。ですからッ‥」







泣きそうな程に必死に言葉を紡ぐ幸村に、慶次は少し屈んで「違うよ。」と呟いた。







「近くで見る花火はきっと壮観なんだと思うけど、俺は幸村と二人で見たいんだ。ダメかな?」


「そ‥んなの…」







駄目なわけ、ないで御座るよ…





………ー―










「見て下され慶次殿! 凄い綺麗で御座るッ!!」







マンションに戻ってきた二人は、夜空に輝く大輪の華をベランダから眺めていた。







「こんなに離れているというのに、花火の音が体に響いてきますぞ!」







少し興奮気味の幸村に「そうだね。」と笑い掛けた慶次は、先ほど買ったリンゴ飴を差し出した。







「人混みの中じゃあ食べられなかったからね。花火見ながら、一緒に食べよう。」


「はい!」







二人並んで飴を食べながら、休みなく打ち上げられる花火を見つめていた。





(今日の飴は、いつもより甘く感じるで御座るな…)





「何故だろう?」と思いフッと横にいる慶次に視線を送れば、思わぬ事態に幸村の体は固まってしまった。







「慶次殿‥ 花火が…」


「うん。でも、夢中になってる幸村を見ているほうが楽しいから。」







花火を眺めていると思っていた慶次の視線は自分に向けられていて、月灯りに優しく浮かぶその顔に幸村の鼓動はドクンドクンと早まった。







「飴、どうかした?」


「え‥ あ…」


「何か、考えながら食べていたみたいだから。」







そんな所まで見られていたのかと、幸村は顔に熱が集まるのを感じた。
きっと慶次には、今の自分の様子などバレているに違いない… そう思いながらも、出来る限り自然に話始めた。







「その、何と言いますか、いつもより飴が甘く感じて…」


「飴が?」


「はい‥ 飴が甘いのは当たり前なので御座るが、何故かいつもと違う気がして…」







幸村の言葉に、「どうだったかなぁ?」と慶次は食べ終えたリンゴ飴の棒をじっと見つめた。







「ねえ幸村、ちょっと味見させて?」


「はい? 構いませぬが‥」

 
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