企画小説

□いつだってLOVE
(親×幸)
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(どこも、可笑しなトコねえよな…)








綺麗に洗顔した
歯も磨いた
髪だって… いつも以上にビシッと決めた



もうこれ以上の「俺」がないぐらい、今日はカッコイイはず。(…多分)





でもこれから会う奴の事を想うと、途端に自信がなくなっていく。








(服…が地味だったか?やっぱもう少し明るい色の…あぁでももう髪セットしちまったし…)








あれやこれやと、考え出したらキリがない。

正直、こんな俺の姿を慕っている後輩どもが見たらどう思うか分からねぇ。
髪も服も、細かく気にした事なんてねえからよ。

でも…








『元親殿…』








今日ばかりは譲れない。
なんせ幸村との、久々のデートなんだからな。








「うぉッ!? やべ…そろそろ行かねえと時間だな。」







服も髪も大事だが、遅刻なんて以ての外。
幸村を待たせるなんて、出来るはずもない。








「よし、行くか!」








最後にもう一度だけ鏡を見、俺は部屋を後にした。








電車に揺られ約40分。待ち合わせの場所はもうすぐ。







ドクンドクン…








あぁ、心臓が煩く音を立てているのが分かる。

もうすぐ幸村に会えるのだと思うと、嬉しくて堪らないと。





ケータイで話やメールは頻繁に交わしているが、やはり何かが足りない。

手を伸ばして届く距離

それが…一番…








「まだ…来てねぇな。」








待ち合わせ場所に到着。
時間は約束の10分前。

幸村の姿は、まだ…「元親殿ッ!」



「!!」








ケータイを通しては、何度も何度も聞いた声。
でも今は、直接この耳に響く。





幸…幸村…








呼ばれた方を見れば、俺よりも小さな体が大きく手を振り近づいて来る。





視界にその姿を捉えれば、無意識のうちに顔の筋肉が緩むのが分かった。








「元親殿!お久し振りに御座る!」


「幸村…あぁ、久し振り…だな。元気だったか?」









大輪の華のよう輝く笑顔の前に、そう言葉を返すのが精一杯で…








「元親殿?」








思っていた以上に、幸村に会えた事にはしゃいでいる自分に気が付いた。








「元…「少し、背…伸びたか?」








そんな気持ちを落ち着かせるよう、幸村の柔らかい髪に手を伸ばす。

少しクセのある、柔らかな髪。








「気が付かれましたか!? 少しではありますが、伸びているので御座るよ!」








ぱあっと明るくなる表情に、愛しさが込み上げてくる。
触れるだけでは足らず、少し強めに髪を混ぜた。








「これで少しは元親殿に… 元親殿…に…」

 
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